宮川路子の水素栄養療法

主治医が教えてくれない水素・栄養療法の話   うつ、がん、アンチエイジング

こどもの身長を伸ばす健康法・栄養療法 背を高くするための生活習慣

こどもの背をのばすための情報

「子供の身長を少しでも伸ばすためにはどうしたらいいでしょう?」
というご相談を受けることがよくあります。私も現在、次男の身長が、長男の同時期の身長よりも10センチも低く、かなりやきもきしているところです。ですから、ご相談を受けるとそのお気持ちがとてもよくわかります。

特に、ご両親の背が低い場合には、せめて自分たちよりも高くなってもらいたい、どんなことをしてでも1センチでも伸びてもらいたいという切実な願いを持っている親御さんが多いようです。

そのような親の気持ちを揺さぶるのは、成長ホルモン、高価なサプリメントを使用する自費診療のクリニックの広告です。ネットサーフィンをすると惹き付けられる魅力的な言葉が並ぶクリニックがいろいろと出てきます。月に数万円以上の費用がかかる場合が多いようですが、説明を読んでいると、すべて自分の子供に当てはまるような気がしてきて、居ても立っても居られなくなります。

「早く受診しなければ」と焦る気持ちをあおられていまうのです。

他にも、激しいスポーツをしていて、背が思うように伸びない、というご相談もあります。サッカーチームや野球チームに入っていて、トレーニングが厳し過ぎるけれど、どうしたらよいでしょうか?というようなお問合せもあります。皆さま、どうにかしたいけれど、何をどうすればわからない、という暗中模索の状態のようです。

身長を伸ばすためにできることについては多くの情報がありますが、正しい知識を持って対応することの大切さをひしひしと感じています。

私は、お子さんの背を伸ばすために必要な大切な基本的なことをここでお伝えしたいと思います。いくら高いお金を払って成長ホルモンを打ったり、サプリメントを飲んでも、基本的な生活習慣、食生活が乱れていては効果は出ません。まずは生活習慣の見直しをしましょう。

ネットにあふれている様々な情報に惑わされず、不必要な高いお金をかけずに、お子さんの身長をできるだけ伸ばすために、是非正しい知識を身に着けてください。

身長に対する遺伝と環境の影響

身長は、遺伝的要因と幼児期の栄養を含む環境要因の2つの組み合わせで決まります。身長の20%が環境の影響によるものとされています(1)。劣悪な環境であれば、環境要因の割合が高くなります。たった20%ではなく、20%も環境要因が影響するのです。ここに介入することはとても重要です。

背はいつまで伸びるのでしょうか?

背が伸びる時期は性別によって異なります。伸びる時期を逃さずに、できることを努力しなければ後から後悔することになってしまいます。

男女とも、第二次性徴があらわれると徐々に伸びなくなります。女子の身長が伸びるのは、生理が来てから数年、平均的には中学2,3年生(15歳)くらいまでとなります。

男子はそれよりも遅く、高校2.3年生(17歳)くらいまで伸びるケースが多いようです。

ただし、これはあくまでも平均的な時期ですので、個人差が非常に大きいということになります。私の子供たちは大学生になってからもまだ伸びていました(二十歳の長男はまだ伸びています)。。。ストレスがなく、よく食べ、良く笑い、よく寝ているからかもしれません。

背が伸びるかどうかの確認方法

身長がまだ伸びるかどうかを確認するためには、手の骨のレントゲン写真を撮るとはっきりします。

成長している骨には骨端線というのがあります。この部分が成長することで、骨が長くなり、背が伸びるのです。骨が成熟して大人になると、骨端線が閉じます。この状態になるともうそれ以上伸びることはありません。

ですから、骨端線が閉じる前に、できるだけ身長を伸ばせるように環境、栄養、生活習慣を整えてあげることが大切です。

身長を伸ばすために大切な条件 その1 栄養

何と言っても、栄養は一番重要です。背が伸びるためには、細胞が活発に分裂しなければいけません。細胞が増えるためには、それを構成する材料が必要です。家を建てるときに、木材がないのでは話になりませんよね。

骨の材料はタンパク質とカルシウムです。
カルシウムは骨を強くし、タンパク質は骨を伸ばします。タンパク質の繊維が骨の骨組みを作ります。鉄筋コンクリートのビルで言えばタンパク質は鉄筋の部分に当たります。そしてカルシウムがコンクリートです。

そして、細胞が増える反応を助けるミネラルやビタミンなどの物質も必要になります。

タンパク質

骨というと、カルシウムだけだと思っている方が多いのですが、そんなことはありません。骨を作るためにはタンパク質が欠かせません。また、背が伸びるポイントとなる成長ホルモンをしっかり出すためには、成長ホルモンを作るための材料も必要です。タンパク質は成長ホルモン産生の材料です。

さらに、ビタミン、ミネラルなどの栄養素を必要な場所に運ぶためにはタンパク質が必要です。カルシウムも、タンパク質がなければ骨を作る場所まで届かないのです。

1960年代に南米でタンパク質と子どもの成長についての研究が行われました(2)。子供たちにタンパク質をサプリメントとして与えたところ、与えなかった子供たちと比べて身長が1〜2センチ高くなりました。身長の話からははずれますが、サプリメントを摂った子供たちは認知機能も向上、さらに、思春期には進学の割合が上がり、男子では収入も高くなったのです。タンパク質が脳の発達のために必要であることが、MRIで確認されています。

成長期の子供は、大人の2倍のタンパク質が必要だと考えられています。
1日、体重1Kgあたり、2gのタンパク質です。

成長期のお子さんは自分でタンパク質の必要性をよく認識しているようです。認識、というよりは、自然に身体が要求する、と言った方がよいかもしれません。成長期の子供たちは、とにかく「お肉!」を食べたがります。食べたいという気持ちを起こさせることによって、スムーズに栄養補給ができるようになっているのかもしれません。タンパク質の重要性については、こちらをご覧下さい。

コラム  肉の消費量は背の高さと元気の秘訣?

私は今スウェーデンに住んでいます。スウェーデンはオランダ、デンマーク、ノルウェーに続き、世界でも4番目に身長が高い国です。といっても、身長は二極化しているような気がします。日本人とそう差がないような人もいれば、190センチを軽く超えるような人もいるのです。女性でも180センチ超えの人もたくさんみかけます。

日照時間が短い(骨の形成に必要なビタミンDが不足する可能性が高い)のに、不思議ですが、肉とチーズの消費量がとても多いことも原因の一つだと思われます。

肉の消費量について、数字で見た訳ではありませんが、スーパーに行くとあまりに充実したお肉売り場にびっくりしてしまいます。そして、個包装の量(大きさ)がまたすごいのです!1キロ、2キロ単位の肉のブロックがごろごろ並んでいますし、ひき肉も1キロ、2キロパックです。

こちらの合い挽きのひき肉は2キロパックです。安売りで、1㎏あたり約500円です。

いったい何人家族でこの肉を食べるのだろう、と思うくらいのボリュームですが、カートに入れている人達がたくさんいます。

大きなブロック肉を買い込んでいるお年寄りのカートを見ると、たまげてしまうことも。スウェーデンでは親子が一緒に住む、いわゆる日本の二世帯住宅のようなものはほとんどありません。ですから、老夫婦二人で食べる食材を買っていると思われるのですが。。。

元気が良い老人が多く、寿命が長いのはたくさんお肉を食べるからではないかと思えるほどです。スウェーデンの平均寿命は日本とほぼ同じなのです。しかも、健康診断や人間ドックなどがなく、医療へのアクセスもかなり制限されているのにも関わらず、です。

そして、肉だけではなく、チーズの消費量もとても多いそうです。

チーズ売り場もすごい迫力です。大きな塊で売られているのですが、1キロかと思って裏返したら、2キロパックでした。。。

ちなみに世界で一番背が高いオランダのチーズのお店はもっとすごいです。チーズの専門店が街のあちこちにありますから。

カルシウム

骨を強くするのはカルシウムです。カルシウム不足では骨粗しょう症のように、骨折しやすい、すかすかの弱い骨となってしまいます。牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品やしらす干しなどでたくさん摂取するようにしてください。

塩分やリン酸塩はカルシウムの吸収を阻害すると言われています。塩分の摂り過ぎは控えましょう。

いわゆる加工食品にはリン酸塩が添加物として多く含まれています。これらの食品はできるだけ避けるようにしましょう。
また、カフェインは尿へのカルシウムの排出を促しますから、コーヒー、紅茶、緑茶(玉露)は飲み過ぎないようにしてください。

炭水化物

摂取したタンパク質が骨の成長のために使われるためには、エネルギー限となる糖質を適切に摂ることも大切です。

成人の場合には糖質を摂らなくても健康に生活できますが、エネルギー消費量の多い成長期の子供は炭水化物も必要になります。

糖質は摂りすぎてはいけませんが、足りないと細胞が生きるためのエネルギーを作り出すクエン酸回路に入るブドウ糖が無くなり、代償として、タンパク質がエネルギー源として使われることになります。すると、成長のために使われるタンパク質が足りなくなってしまいます。
ただし、菓子パンや甘いお菓子、清涼飲料水などはいけません。糖質はごはん、野菜、果物を食べるようにしましょう。

ビタミンD

カルシウムの吸収にはビタミンDが必要です。いくらカルシウムをたくさん摂ったとしても、ビタミンDがなければ腸から吸収することが出来ません。

今の子供たちは外遊びの時間が大幅に減っています。また、日焼けが身体に悪いという認識が広まっているために、日焼け止めを塗る子供、帽子をかぶる子供が増えています。

日本人は皆ビタミンDであると言われているのです(ビタミンDについては、こちらをご参照ください)。是非、ビタミンDを摂取してください。

さきほどスウェーデン人の身長が高い話をご紹介しました。日照時間は短いのですが、薬局でも、スーパーでも、サプリメントの専門店に行っても、ビタミンDのサプリメントが一番目立つところに何種類も置いてあります。ほとんどの人がビタミンDのサプリメントを毎日摂っているそうです。

現在2月。ビタミンDのサプリメントの売れ行きはとても良いようで、売り切れているところもあります。

ビタミンK

ビタミンKは骨の形成、骨質の維持のために重要な働きをします。ビタミンDを摂りすぎるとビタミンKが不足すると言われていますので、ビタミンDとセットにして摂ることが推奨されます。納豆や青菜類に多く含まれています。サプリメントでは、ビタミンD3とビタミンK2が一緒になったものが売られています。

これは、ビタミンDとKがセットになって、身体に貼るフィルムです。

ビタミンB群、鉄、マグネシウム、葉酸

これらは身体の中でエネルギーをつくり出すときに必要となるものです。骨の健康のためにも欠かせない栄養素です。

特に鉄不足は小児の低身長や知能指数の低下を引き起こします。
0歳から1歳までの1年間は人の一生のうち、一番成長するときです。また、1歳から2歳も発育が盛んです。この時期には鉄不足になることが多くあります。
母乳栄養児にはその傾向が強いのです。母親も鉄不足であることが多いため、母乳だけでは鉄不足となります。鉄不足の影響を後から取り戻すのは大変です。妊娠中からしっかり鉄を補充するようにしましょう。

鉄が足りないと運動能力や知能の低下も引き起こされます。母子で鉄をしっかりと摂取するように心がけて下さい。赤身の肉や魚をしっかり摂りましょう。ただし、それだけでは足りない場合には鉄剤で補充することも効果的です。小さいお子さんには鉄のシロップ剤がお勧めです。

アルファGPC

知る人ぞ知る、背が伸びるためのサプリです。記憶、認知機能に関与する神経伝達物質、アセチルコリンの前駆体であり、神経細胞の細胞膜を構成するために必要です。認知機能のサポートのためのサプリとして高額で売られているものですが、背が伸びるサプリとしても有名です。ただし、iherbでお安く手に入ることが知られていません。
是非こちらをお試ください。集中力を高めるためにも役立ちます。

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コラム   納豆を食べ過ぎると背が伸びないのか?

よく、大豆製品を食べ過ぎると背が伸びないと言います。大豆の中に含まれているイソフラボンが女性ホルモンと似た働きをするためです。摂りすぎれば、性の早熟や、骨端の閉鎖を引き起こす可能性があると言われています。常識的な量を食べている場合には、そんなに神経質になる必要はありませんが、摂りすぎないように気をつけた方が良いと思います。

厚生労働省は次のような見解を発表しています(3)。

大豆及び大豆イソフラボンに関するQ&A

問: 子どもに大豆イソフラボンを含む食品を食べさせても大丈夫ですか。 また、妊婦についてはどうですか。

 (1)子どもについてはどのくらいの大豆イソフラボンの摂取であれば心配がないのか、妊婦についてはどのくらいの大豆イソフラボンの摂取であれば胎児に影響がないのか、現時点では科学的に明らかになっていません。
 そのため、子どもや妊婦が、日常の食生活で食べている「伝統的な大豆食品」に加えて、特定保健用食品などにより、日常的な食生活に上乗せして大豆イソフラボンを摂取することは、推奨されていません。
  (2)豆腐、納豆、煮豆、みそなどの「伝統的な大豆食品」については、大人と同様に、日常の食生活の中で他の食品とともにバランスよく食べることに気をつければ、心配する必要はありません。

朝食をしっかり食べる

朝ご飯を抜く子供が増えています。忙しい朝にきちんとご飯を用意しない親が増えているのかもしれません。また、夜寝るのが遅くてぎりぎりまで寝ていて時間がないということもあるでしょう。
子供は朝から活発に動いてエネルギーを必要とします。朝ご飯を食べずに学校に行くと、エネルギー不足のため、身体が危機感を覚え、エネルギー消費を抑えるために、成長を止めてしまいます。タンパク質がエネルギー源として使われてしまうことにもなります。朝ご飯は抜かずにしっかり食べましょう。

ダイエットをすると背が伸びない

女子は小学校高学年、中学校に入ると体型を気にしてダイエットを始めることがあります。成長する一番大切な時期に栄養素を摂らないということは、成長障害へとつながります。身長だけではなく、臓器にも影響がでてしまいかねません。背を伸ばしたいのなら、ダイエットをしてはいけません。

サプリメントのすすめ

必要なこれらの栄養素が足りなければ、細胞が元気にエネルギーを蓄えられないため、分裂もできず、背も伸びません。是非、バランスの良い食事でしっかりと摂取してください。もし食事だけでは不足と思われたときには、プロテインパウダーやサプリメントで補うこともよいと思います。

食べ盛り、伸び盛りの子供に栄養価の高い食事を常に準備するのは本当に大変です。プロテインパウダーやサプリメントを上手に利用することによって、食事で足りないところを補い、食事を作るストレスを減らすことは、お子様のためにも良い影響があると思います。実際に私もそのようにしています。

今日は少し、お肉が足りなかったかな、という日にはヨーグルトにプロテインを混ぜてフルーツを添えデザートに食べてもらいます。そうすれば、いらいらしたり、心配したりしなくて済みますから。

背を伸ばすためのサプリメントについての注意

背を伸ばすための専用のサプリメント(複合剤)がたくさん売られています。私も実際に何種類か取り寄せてみました。せっかく取り寄せましたので、次男に飲ませましたが、内容を見てみると、あまりにも含有量が少なく、がっかりしてしまいました。

少し手間はかかりますが、自分でしっかりとビタミン、ミネラル類を購入して組み合わせたほうがよほど効果的であると感じています。もちろん、次男にはサプリメントをのませています。取り寄せた、いかにも背が伸びそうな名前のサプリメントは、補助的に“食べて”喜んでいます。私も試しに食べてみましたが、ヨーグルト味などがついていて、まるでお菓子のようでした。これらに、高いお金(ほとんどのサプリメントが月4000円程度します)を払うなんて、本当に馬鹿らしいと感じています。

身長を伸ばすために大切な条件 その2 睡眠

背を伸ばすために夜は早く寝ましょう

昔から“寝る子は育つ”、といいますが、まさにその通りです。身長を伸ばすためにはよく寝なくてはいけません。

またまた世界の身長の話ですが、OECDが2018年に発表した睡眠時間のデータによると、身長1位のオランダは1日当たりの睡眠時間は507分、デンマークは489分、ノルウェーは492分、スウェーデンは512分、そして日本は最低の442分でした。身長が高い国の睡眠時間はやはり長いようです。

我が家の長男長女は、ひたすら寝ていた時期がありました。今思うとその時期にものすごく身長が伸びていました。長女は中3のとき、1年間に14センチも伸びたのです。異常なまでの伸び方で、びっくりしてしまいましたが、暇があれば寝ていたという表現がぴったりなほどでした。

勉強しているから遅い、というのなら朝早起きして勉強しましょう。夜は成長ホルモンを分泌させるためにしっかり寝なければいけません。できるだけ早く寝て、ぐっすり熟睡できるようにしましょう。

成長ホルモンは、身長を伸ばす作用、骨を丈夫にする作用があります。いくらしっかり栄養を摂っても、成長ホルモンが出ていなければ身長は伸びません。夜更かしをして、睡眠時間が短くなると成長ホルモンの分泌に影響を与えます。

しかも、勉強は“後から挽回”できるかもしれませんが、背を伸ばせるのは、骨端線が閉じるまでの、ほんの短い期間だけしかないのです。

また、質の高い睡眠のためには、夜寝る前のスマホ、パソコンはよくありません。脳が活性化して、熟睡するまでに時間がかかってしまいます。ゲームなど、興奮作用がありますから、もってのほかです。背を伸ばしたいのであれば、夜はこれらは止めさせましょう。

「背を伸ばしたくないの?ゲームを夜やると背が伸びなくなるのよ。]と言えば、その年代の男子には効果てきめんかもしれません。

睡眠の質を上げるためのポイント

朝早く起きる
朝陽を浴びる
夜早く寝る
運動する
部屋を暗くする
快適な寝具を準備する
寝る前直前の食事、入浴を避ける

睡眠の質を上げるための工夫はこちら(準備中)をご覧ください。

身長を伸ばすために大切な条件 その3 運動

体をよく動かして、骨、筋肉の成長を促します。活動量の低い子供は身長が伸びないことが報告されています(4)。運動をすると食欲が増し、よく食べるため栄養を十分に摂ることができます。さらに、運動をすると疲れるため、夜熟睡することができます。これは成長ホルモンの分泌のために重要です。また、ストレス解消にもなり、精神的に落ち着くため、さらに睡眠を安定させます。さらに、運動自体によって成長ホルモンの分泌が促されることが分かっています。

過度な運動をすると背が伸びない

けれども、運動のし過ぎはいけません。過度に筋肉や骨に負担をかけることは成長を阻害します。
体の特定の部位に負荷がかかり過ぎたり、体力を消耗し過ぎて疲れがたまってしまうような運動はよくありません。
エネルギーを使い過ぎると、栄養不足につながります。また、成長期にある子供の骨に負荷をかけすぎると成長する場所である骨端が損傷して、背が伸びなくなってしまいます。

筋力、持久力をつけるため、根性を入れるためというようなトレーニング(マラソンを走らせるなど)は成長期の子供にはよくありませんので、注意してください。
成長期の子供たちのためには運動は、疲れをためないように、メリハリをつけなければいけません。少年野球やサッカーのチームによっては、休日に長時間の練習、試合、トレーニングを行っていることもあるようです。疲れがたまると怪我や故障が出ます。

長時間の試合の後、さらに
「試合に負けたから、グラウンド20周走れ!」
というようなことは決してやってはいけません。

過度な運動の後には疲れすぎて食欲が落ちることがよくあります。エネルギーをたくさん使った後に補充ができないのは致命的です。適度な運動を心がけましょう。

大谷翔坪選手はなぜ背が伸びたのか?

大リーグで活躍中の大谷翔平選手が小学校で野球をしていた時の話です。
野球の練習はしっかりやっても、負担をかけるマラソンはしてはいけない、という方針だったとのこと。大谷選手があんなに背が伸びたのはそのせいかもしれません。

さらに、大谷選手はとてもよく寝ていたそうです。少年野球チームの合宿でも1人で一番に、9時には眠っていたとのエピソードがテレビで紹介されていました。

新体操、フィギュアスケートの選手、バレエなど、小さいときから激しく運動をする競技にはほとんど背が高い選手がいません。これらの競技の選手は、体重を厳しく管理されることもあり、背が伸びる時期に栄養不足であるということも背が伸びない原因と考えられます。
運動のし過ぎと低身長についての研究は発表されていないようですが、常識的に考えて、背を伸ばすためには激しすぎる運動は避けるほうが良いと考えます。

肥満を避ける

背を伸ばすためには、太り過ぎには注意が必要です。というのは、肥満の子供は二次性徴が早く来てしまうからです。二次性徴が早ければ早いほど、身長の伸びが止まるのが早いということになってしまいます。
二次性徴の開始のシグナル の一つがレプチンという脂肪細胞から 出てくるホルモンということもわかっており、脂肪細胞を大きくしないことが大切なのです。ですから、適切な運動をすることは、肥満を避けるためにも重要なのです。

精神的なストレスを与えない

引っ越しをしたり、習い事が大変だったり、いじめにあっていたり、家庭内不和があったりすると、子供の身長が伸びないことがわかっています。過度なストレスはいけません。
ストレスが多いと精神的な成熟が早くなります。二次性徴が早く来ることになりますので、背はのびなくなってしまうのです。また、食欲がなくなって栄養不足となることもありますし、逆に食欲が亢進しすぎて肥満となるケースもあります。いずれにしても良いことではありません。

親ががみがみ言わないこと

成長期、最後に背が伸びる時期は男女ともにちょうど反抗期にぶつかることが多いのです。とんでもない態度に親はいらいらしてしまい、口うるさく注意をしたくなってしまいます。ですが、反抗期に注意をしてもまったくよくはなりませんし、かえって逆効果となりかねません。

私は反抗期は栄養不足が大きな原因だと考えています(女子の反抗期についてはこちらをご覧ください)。
男子は男性ホルモンが分泌されていらいらが増してしまうこともあると思います。いずれにしても、反抗期はずっと続くわけではありませんから、反抗期のこどもはゆったりと泳がせておいてあげるのが一番です。

がみがみ言われると、ストレスになります。成長にはマイナスの影響しかありません。お子さんの背を伸ばしたいと思ったら、決してがみがみ言わないように心がけてください。

コラム インド・韓国における手術による身長矯正

身長を伸ばしたい、という切実な思いは万国共通のようです。そしてそのニーズが、いろいろな治療法を生み出すのです。

夢の治療法、といわれてひそかにブームとなっているのが、足の骨を切って金属製の棒を埋め込み、10センチ近く足を引きのばす外科手術です。有名なのはインドにおける治療ですが、お近くの韓国でも有名な医師が積極的に治療を行っています。病院のサイトには日本語のページもあり、日本人もかなりの数が訪れている模様です。
けれども、この治療には危険が伴います。感染症が起こった場合には大変なことになります。また、この手術を受けた人が年を取ったときにどのようなことになるかはまだ未知数です。無理な手術をしてまで背を伸ばす必要があるのでしょうか?私はこの治療はお勧めしません。

背が低いことのメリット

背は高い方が良い、背をできるだけ伸ばしたいと思っている人が多いのですが、実は、背が低いことのメリットがあるのです。
背が低い人は寿命が長く、がんに罹るリスクが低いのです。

以前からいろいろな研究が発表されていますが、最近の研究では、身長が1インチ高くなると、全死亡率が男性で2.2%、女性で2.5%高くなる。身長がさらに1インチ高くなると、がんによる死亡が男性で7.1%、女性で5.7%高くなると報告されました(5)。
また、100万人を対象としたメタアナリシス(6)によると、国や人種に関係なく、身長が6.5 cm増加するごとに、血管原因による死亡が6%減少し、癌による死亡が4%増加していました。

さらに、つい最近発表された日本のコホート調査(7)では、身長が高くなると全がん死亡率は上がることが報告されました。ただし、脳血管疾患による死亡率は下がることが認められたそうです。がん以外の病気については、不明の点も多いのですが、がんについては原因もかなり確実なものとなっています。
身長が高くなると癌の死亡率が上がることは、インスリン様成長因子-1(IGF-1)のレベルによって説明することができます(8-11)。また、これは、細胞増殖およびアポトーシスの阻害の促進にも関連しているのです(12)。そして、乳がん、前立腺がん、大腸がん、肺がんなど多くのがんのリスクをあげることが明らかとなっています。

IGF-1は成長ホルモンによって分泌が促進されます。自然に分泌されているレベルであれば良いのですが、このIGF-1を低身長の治療で用いるケースもあります。成長ホルモンの補充療法では、頭痛、痙攣、耐糖能異常等の副作用が出ることもあります。また、代謝異常が起きることもあります。そして前述したように、細胞の分裂をうながす作用があるため、発がんの危険性があるのです。このような物質を成長期の子供に与えることは未知の危険を伴うと考えられ、十分な注意が必要です。病的な低身長で、成長ホルモン治療が保険適応となるようなケースを除き、自費診療での治療については、本当に必要かどうかよくお考えになってください。

背が高いことのデメリット

背が高い方が生活に不便が生じることが多いようです。
ベッドに寝るときに、背が高い人は背中を丸めて寝ることを強いられます。これはかなりのストレスです。背が低い人が大の字で寝られるのと比べると、疲労回復度は大幅に異なるのです。同じことが飛行機でのフライトにも言えます。足が前の座席につかえて無理な姿勢で我慢しなければいけないことになると、ロングフライト症候群の確率も上がってくるでしょう。

そういえば、私のゼミ生でとても背が高い男子が、面白いことを言っていました。電車のつり革とか、「いろいろなところに頭をぶつけそうになるのは、慣れていて、気を付けているのですが、何もなさそうに見えるところを歩いていて、頭にクモの巣がひっかかるのが一番いやです。」
と。なるほど、そんなことは背が低いと考え付きもしないことですね。。。
ただし、背が高い方が社会階級が高く、収入も多い傾向があることも報告されています(13)。これについては、どちらが原因で結果かはわかりません。栄養状態や環境が良いために背が伸びた、ということの方が理解しやすいと思います。
うどの大木、なんて言葉もありますから。

コラム 身長は遺伝するか? 足のサイズと身長について

私は以前、大学で身長と体重、足のサイズについての調査を行ったことがあります。
学生さんに依頼して、両親、兄弟のデータも提出してもらいました。数百名分のデータが手元にありますが、残念ながらまだどこにも発表をしていません。
傾向としては、

親の背が高いと子供も高い
親が肥満であると、子供も肥満の傾向がある
背が高い人は足のサイズも大きい
親よりも子供の方が背が高い

という結果でした。
もちろん、統計データですから、外れ値があり、これが当てはまらないケースもあります。
ですが、何となく、イメージとして持っていたことが証明されたのではないかと感じています。

参考文献
(1)Silventoinen K. Determinants of variation in adult body height. J Biosoc Sci. 2003 Apr;35(2):263-85.
(2) Storrs C. How poverty affects the brain. Nature 547(7662):150-152. 2017
(3)https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0202-1a.html#q10
(4)Meinhardt U et al. Less physically active children are shorter. Minerva Pediatr. 2017 Apr;69(2):135-140. doi: 10.23736/S0026-4946.16.04287-0. Epub 2015 Nov 19.
(5)Sohn K. Now, the Taller die earlier: The curse of cancer. J Gerontol A Biol Sce Med Sci. (6):713-9. doi: 10.1093/gerona/glv065.2016
(6)Energing Risk Factors Collaboration. Adult height and the risk of cause-specific death and vascular morbidity in 1 million people: individual participant meta-analysis. Int J Epidemiol. 2012 Oct;41(5):1419-33. doi: 10.1093/ije/dys086. Epub 2012 Jul 23.
(7)Ihara H et al. Adult height and all-cause and cause-specific mortality in the Japan Public Health Center-based Prospective Study (JPHC). PlLoS One. 2018 May 14;13(5):e0197164. doi: 10.1371/journal.pone.0197164. eCollection 2018.
(8) Kaaks R, Toniolo P, Akhmedkhanov A, Lukanova A, Biessy C, Dechaud H, et al. Serum C-peptide, insulin-like growth factor (IGF)-I, IGF-binding proteins, and colorectal cancer risk in women. Journal of the National Cancer Institute. 2000;92(19):1592–600. Epub 2000/10/06. pmid:11018095.
(9)Yu H, Spitz MR, Mistry J, Gu J, Hong WK, Wu X. Plasma levels of insulin-like growth factor-I and lung cancer risk: a case-control analysis. Journal of the National Cancer Institute. 1999;91(2):151–6. Epub 1999/01/29. pmid:9923856.
(10)Key TJ, Appleby PN, Reeves GK, Roddam AW. Insulin-like growth factor 1 (IGF1), IGF binding protein 3 (IGFBP3), and breast cancer risk: pooled individual data analysis of 17 prospective studies. The Lancet Oncology. 2010;11(6):530–42. Epub 2010/05/18. pmid:20472501
(11) Stattin P, Bylund A, Rinaldi S, Biessy C, Dechaud H, Stenman UH, et al. Plasma insulin-like growth factor-I, insulin-like growth factor-binding proteins, and prostate cancer risk: a prospective study. Journal of the National Cancer Institute. 2000;92(23):1910–7. Epub 2000/12/07. pmid:11106682.
(12)Pollak M. Insulin and insulin-like growth factor signalling in neoplasia. Nature reviews Cancer. 2008;8(12):915–28. Epub 2008/11/26. pmid:19029956.
(13)Tyrrell J et al. Height, body mass index, and socioeconomic status: mendelian randomisation study in UK Biobank. BMJ. 2016 Mar 8;352:i582. doi: 10.1136/bmj.i582.