- 投稿日
- 2019年2月4日
- 更新日
タンパク質について
タンパク質とは
タンパク質は栄養素の中でももっとも大切なものです。
タンパク質は20種類のアミノ酸が鎖状に連結してできた高分子の化合物です。構成するアミノ酸の種類や数、結合の順番などによって種類が異なり、様々な種類のタンパク質が存在しています。
私たちの身体は37兆個の細胞から成り立っていると言われています。そのひとつひとつの細胞を作っているのはタンパク質です。細胞には多くの水分が含まれています。人の身体の構成成分のうち、60%は水分ですが、タンパク質は15〜20%を占めています。
タンパク質の働き
1)身体全体を作るための材料
皮膚も、髪の毛も、爪も、血管、血液、筋肉、臓器、骨、歯もタンパク質がなければ作り出すことができません。もちろん、コラーゲンもタンパク質からできています。
身体をつくるための材料として、タンパク質をしっかりと摂らなければ健康・美容を保ち、老化を防ぐことができないのです。
2)体の働きを助ける機能を持つ
生命の維持のために身体の中で働くホルモンや、酵素、輸送タンパク質、免疫細胞などもタンパク質(アミノ酸)から作られています。反応の触媒となったり、栄養素の運搬にも携わったりしていますから、タンパク質が足りないと、様々な機能障害が生じます。さらに、タンパク質自体がエネルギー源としての役割も持っています。
① 各種栄養素の輸送と貯蔵
タンパク質は様々な栄養素を運んだり、貯蔵するために重要な働きをしています。
身体に重要な鉄も、トランスフェリンという輸送タンパク質がなければ必要な場所に送り届けることができません。酸素を組織に運ぶヘモグロビンも鉄とタンパク質が結合しています。
細胞膜で様々な物質の細胞内外の移動を助ける役割を担っている膜タンパクもあります。
食事やサプリメントを摂取しても、タンパク質が足りないと有効に活用することができません。
②薬の働きを助ける
薬はタンパク質(アルブミン)と結合して体内を巡ります。タンパク質不足があると、薬の効果が落ちたり、副作用が出る可能性があります。
③神経伝達物質を作り、精神を安定させる
記憶、情動、気分などに関係する神経伝達物質として、ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンなどがありいますが、これらはチロシン、フェニルアラニン、トリプトファンという必須アミノ酸から作られています。これらが足りないと、精神的に不安定になります。
こころの健康のためには十分なタンパク質が必要です。
④ 酵素
各種の消化酵素はタンパク質でできています。タンパク質の分解酵素は、胃液のペプシン、膵液のトリプシン、小腸のペプチターゼなどです。が、これらもタンパク質が材料となります。タンパク質が足りないと、栄養を摂っても消化不良となって体内に取り込むことができなくなります。
③ 免疫機能
免疫を司る抗体、補体、各種の受容体(レセプター)もタンパク質でできています。タンパク質が足りないと、免疫機能が低下します。
私たちが予防接種を受けるのは、感染症の予防のためです。具体的に言うと、予防接種によってからだの中で抗体を作り出すのです。細菌がからだに侵入してきたときにこの抗体がやっつけてくれるのですが、タンパク質が足りないと抗体を十分に作り出すことができません。
免疫力を高めるためにしっかりとタンパク質を摂りましょう!
⑤ ホルモン
各種のホルモンはタンパク質にでできています。ホルモンは生命維持のために重要です。
⑥ エネルギー源
タンパク質は1g4kcalです。
このように、タンパク質は様々な重要な働きを担っています。タンパク質不足が起きると、多彩な症状が出現します。
タンパク質不足の影響
全身の老化(皮膚、髪、、骨、筋肉、歯、血管、内臓)
体調不良
易感染性(感染症に罹りやすい)
貧血
タンパク質は生命、健康を維持するためにとても重要な役割を果たしています。
異化と同化
私たちの身体は常に新しく作り替えられています。爪はどんどんのびて、古い部分は捨てられ、新しい爪が作られているのがよくわかります。皮膚をとってみても、古い細胞が角化してはがれおち、下から新しい皮膚がつくられます。腸の粘膜細胞も毎日かなりの量が入れ替わっています。
古い細胞は分解(異化)されて、新しい細胞がつくられる(同化)のです。
異化によって分解されたアミノ酸はまた吸収されて再利用されることもありますが、新しく必要となるアミノ酸を食事から摂取する必要があります。
食事からのタンパク質摂取が不足すると、健康に対しても様々な影響が出るのです。
がんの治療とタンパク質
がんはどんどん増殖する性質を持っています。通常の細胞よりも分裂、増殖する速度がとても速いのです。がんも細胞ですから、タンパク質を使います。手術で切り取ったがんを観察すると、がっちりと固く、いかに多くのタンパク質を取り込んでいるかがよくわかります。その分、正常細胞にまわるタンパク質が少なくなって、正常な機能が保てなくなってしまうのです。
がんの治療の際には、たくさんタンパク質を摂ることが必要です。
がんと闘うためには、糖質制限とタンパク質、各種ビタミン、ミネラルの摂取が大切になります。
タンパク質の消化吸収
私たちが食べた食品は消化酵素で細かく分解されて腸から吸収されます。
タンパク質であれば、アミノ酸、ペプタイドの形に分解されますが、タンパク質分解酵素がこの働きをしています。
タンパク質分解酵素には、上で紹介したように、胃液のペプシン、膵液のトリプシン、小腸のペプチターゼなどがあります。
これらの消化酵素が足りないと、タンパク質を消化吸収することができません。
消化酵素そのものも、タンパク質から作られています。ですから、そもそもタンパク質不足があると、消化酵素が十分に作れないため、更にタンパク質の消化吸収が抑えられるという悪循環に陥るのです。
タンパク質はアミノ酸から作られます
身体の中で利用されているタンパク質は多数のアミノ酸が結合してできています。アミノ酸には20種類あり、すべてのタンパク質はこれがいろいろな配列で組み合わさって作られます。
20種類のうち、9種類のアミノ酸は体内で合成することができないため、食事から摂取する必要があります。このため、この9つは必須アミノ酸と呼ばれています。 他の11種類は体内で作ることができます。
必須アミノ酸
•リジン
•バリン
•ロイシン
•イソロイシン
•メチオニン
•スレオニン
•フェニルアラニン
•トリプトファン
•ヒスチジン
非必須アミノ酸
•アルギニン
•グリシン
•アラニン
•チロシン
•セリン
•システイン
•アスパラギン
•グルタミン
•プロリン
•アスパラギン酸
•グルタミン酸
注:幼児では、アルギニンは必須アミノ酸となっています。
グルタミンは免疫力と関連があるとされています。
グリシンは睡眠の質を改善すると言われています
分岐鎖アミノ酸(BCAA)
分岐鎖アミノ酸はバリン、ロイシン、イソロイシンのことです。筋肉の合成と関係が深いアミノ酸です。このとため、筋肉トレーニングをしているアスリートをはじめとした人たちがBCAAの摂取を目指しており、多くのサプリメントが売られています。
タンパク質の評価:プロテインスコアとアミノ酸スコア、タンパク質消化吸収率補正アミノ酸スコア(PDCAAS)
プロテインスコア、アミノ酸スコアともに食品中のたんぱく質を評価する指標です。
プロテインスコアの方が歴史が古く、1957年に国連食糧農業機関(FAO)によって出された食品のたんぱく質栄養価の評価指標です。卵における必須アミノ酸の組成を理想としてこれを100とし、他の食品について評価している、比較的簡単な指標です。ただし、これは人体のアミノ酸必要量を考慮していないため、アミノ酸スコアとして1973年に改訂されました。
アミノ酸スコアは、プロテインスコアを改良したもので、食品中に含まれる必須アミノ酸の含有比率(基準値に対する充足率)を評価するものです。その食品における充足率が最も少ないアミノ酸の割合をアミノ酸スコアとします。ですから、8種類の必須アミノ酸の充足率が100%であっても一つでも80%のものがあれば、アミノ酸スコアは80となるのです。
アミノ酸スコアの計算に用いるアミノ酸評定パターンは、FAOと世界保健機関(WHO)によって数値が提示されています。その後、さらに検討が重ねられ、1985、1989年にもアミノ酸基準値の改訂が行われています。
さらに、それぞれのアミノ酸の消化吸収率を加味したタンパク質消化吸収率補正アミノ酸スコア(PDCAAS)という基準が1990年に出されました。
栄養学の専門家はこのPDCAASを用いることを推奨する人が多いのですが、よほど特殊な病気などでない限り、素人にはそこまで専門的な値は必要ないと思います。
食事をする際の食材を選ぶ時の判断基準としては、アミノ酸スコアで十分だと考えています。
アミノ酸スコアを参考にしましょう
以前のプロテインスコアとアミノ酸スコアを比較すると、アミノ酸スコアの方が値が高くなっています。
これは、プロテインスコアを定めたときに参照した研究データがラットを使用したものだったなど、データの不備によるもので、決してアミノ酸スコアが甘い基準だからということではありません。
むしろ、アミノ酸スコアは、人におけるアミノ酸の必要量に基づくものであり、動物性タンパク質を食べることによる生活習慣病の増加を予防するために、例えば日本の伝統食であるお米と豆類を一緒に食べるなどの食品の組み合わせで、足りないアミノ酸を補うという考え方を基本としていますので、日本人の食生活に合ったものではないかと考えられます。
また、100という最高値のものが増えている点については、必須アミノ酸のすべてにおいて基準値を満たしていればそれ以上の多寡については問われない評価方法であることが理由です。
このこのために、”甘い評価〝、という印象を持たれてしまうのかもしれませんが決して甘い基準ではありません。
基準値は、上でお話ししたように、アミノ酸スコアでは動物実験ではなく、人を対象とした基準に改訂されています。ちなみに、動物では体毛の成長に必要なアミノ酸(メチオニン)が非常に多く必要となるため、プロテインスコアでは基準値が高くなっていました。ヒトは動物のように身体全体が毛で覆われているわけではありませんから、不必要な基準値ということになります。
以上のような理由から、タンパク質について評価する場合には、プロテインスコアではなく、アミノ酸スコアを参考にしてください。
ただし、プロテインスコアを改良して作られたアミノ酸スコアにもいろいろと不備があり、批判があるのも事実です。
なぜなら、アミノ酸スコアは、あくまでも窒素1gあたりのアミノ酸のバランスの評価ですので、タンパク質の量の評価にはなっていません。
所詮、一つの数値で多くの項目を評価しようとすること自体に無理があるのではないかと思います。
私は人体のニーズに合ったアミノ酸スコアを参考にしながら、あまり難しいことを考えず、バランスの良い食事を食べることを心がけるのがよいと思います。
あまり神経質にならず、しっかりと量を食べるということに重点を置いた方がよいでしょう。
卵、肉、魚を食べ、できるだけ食品は偏らず多くの種類を食べることを心掛けてください。
主な食品のアミノ酸スコア
食品 | アミノ酸スコア | 食品 | アミノ酸スコア | 食品 | アミノ酸スコア |
---|---|---|---|---|---|
卵 | 100 | しじみ | 100 | 精白米 | 78 |
牛乳 | 100 | まぐろ | 89 | 玄米 | 68 |
チーズ | 92 | さんま | 96 | 大豆 | 100 |
ヨーグルト | 100 | いわし | 100 | 豆腐 | 51 |
牛肉 | 100 | あじ | 100 | 納豆 | 55 |
豚肉 | 100 | かつお | 100 | 小麦粉 | 56 |
鶏肉 | 100 | さけ | 100 | とうもろこし | 74 |
レバー(牛・豚・鶏) | 100 | いか | 86 | じゃがいも | 73 |
ロースハム | 100 | えび | 73 | ごま | 50 |
ベーコン | 95 | たこ | 72 | ピーナッツ | 50 |
タンパク質の推奨摂取量とお勧めの食品
必要なタンパク質の量は年齢や体重、運動量などによっても異なります。
簡単に言うと、普通の人の場合には、
体重1キロあたりタンパク質1g〜1.5gです。
もっと多い量が必要となる場合には体重1キロあたり2gを目標にして頂くとよいでしょう。
例えば、運動量が多い人、妊娠中、授乳中の女性、成長期のお子さん、がん患者の方、甲状腺機能亢進症などの場合です。
体重50キロであれば、1日50g~100g。これを充足させるためには結構大変です。
1日に、
卵最低2個(卵は必須アミノ酸だけでなく、必須脂肪酸であるリノール酸、リノレイン酸、アラキドン酸も含んでおり、とても栄養価の高い優秀な食品です)
肉200g
魚200g
これに加えて、
チーズ、ヨーグルト、牛乳などを摂って頂くとよいでしょう。
ハムやソーセージは加工食品であり、どうしても添加物が多くなりますので、お勧め致しません。加工食品の毒についてはまた改めてお話ししたいと思っていますが、加工食品はできるだけ避けてください。
そして、食品だけでは十分なタンパク質の量が摂れないことも多いと思います。食事だけで摂ろうとすると、追いつめられてノイローゼになってしまうかもしれません。
「しっかりした食事を作らなくては!」と神経質にならず、
気持ちを楽に持って、
「今日の食事ではタンパク質が足りないかな」
と思ったときにはプロテインで補充する、という方法がストレスがかからずによいのではないかと考えています。
プロテインパウダーについて
私がお勧めしているのは、糖質の入っていないプロテインです。
乳糖も取り除かれているものがよいでしょう。
そして、人工甘味料もはNGです。
ですから、”〇〇風味”、というように、味つきのものはだめということになります。
ただ、お子さんであれば、プレーンのものではのむのが難しいかもしれません。
ヨーグルトに入れて、良くかき混ぜ、フルーツと一緒に食べるのが良いのですが、どうしても甘味が欲しいということであれば、オリゴ糖、ハチミツなどで甘味を加えてください。
日本で購入する場合、国産であっても、原料はアメリカ産のものがほとんどです。アメリカのプロテインは質が高いと言われていますが、スウェーデンに来て感じたのは、スウェーデンにおけるプロテインの質の高さです。
味つきのものは甘みが強すぎて飲めませんが、プレーンのプロテインはとても飲みやすく、気に入っています。
何よりも、家畜に抗生剤や成長ホルモンを使用していないというところが素晴らしいと感じています。
是非、質の高いプロテインパウダーをお試しください。