- 投稿日
- 2019年2月1日
- 更新日
献血と貧血 〜献血でうつになる!〜
貧血は大変な病気
前の記事で、貧血とうつ病の関係について書きました。貧血がひどくなると、様々な症状が出ますが、そのうちのひとつに気分の落ち込みなどのうつ症状があります。貧血はよくあることで、たいした病気ではない、と思っている人が多いのですが、実は大変な病気なのです。放っておくと悲惨なことになりかねません。
生理がある女性はそれだけでも鉄不足になりやすいのですが、男性でも特殊な状況では重度の鉄不足になります。
通常、多いのは消化性潰瘍や痔の出血です。
特に、ストレスが大きい方では、
↓
胃や十二指腸に潰瘍ができる
↓
出血
↓
貧血
↓
うつ症状を呈する
ということになります。
これは、ストレスからうつ病を発症する一つのメカニズムとしてかなりわかりやすいのではないかと思います。
献血で貧血になる!
他にも、血液を失う特殊なケースとして、献血があります。
献血が大好きというケース。こういう方、結構いらっしゃいますよね?
献血をするためには基準があり、貧血の人は献血をすることができません。
献血によって、貧血がよりひどくなってしまう可能性があるからです。
献血のサイトには、
「献血の基準は、献血者の健康と安全を第一に考えて決められています。貧血に関しては、事前に血液の比重などを調べ、基準に合わない方は献血をご遠慮いただいています。ですから、献血で貧血になることはありません。」
ということが書かれています。
ところが、実際には献血で貧血となっている例がかなりあると考えられます。
私は今までに体調不良の社員や学生さんが献血愛好者だったというケースを何例も経験しています。
本当に意外ですが、びっくりするほど、献血好きの人が多いのです。
他人のために大切な血液を提供してくださるというその貴重な行為は、医療に携わる者として、とても有難いことだと思っています。けれども、知らず知らずのうちに自分が不調となり、病気にかかってしまうようなことは避けなければいけません。
献血でうつ状態になった会社員の例
産業医として経験したうつ病の男性社員はまさに献血によって貧血となり、引き続いてうつ状態に陥っていました。
だるくて、朝起きられない、やる気がでない、気分が落ち込んで最近仕事のミスが増えた、とのことで本人のみならず、上司もちょっとおかしいのでは?と気づいて面談をすることになりました。
夜も眠れず、典型的なうつ症状です。
仕事のストレスももちろんあるようでしたが、話を聞いていても、何かしっくりこないのです。
既婚で食事はちゃんととっているとのことでしたが、顔色は悪く、覇気がありません。
そこで、
「献血していませんか?」
と聞いたところ
ぱっと顔を輝かせて、
「見てください!」
と献血カードを出して見せてくれました。
献血が大好きで、全血輸血400mlをきっちり年に3回行っているとのこと。
血液検査でヘモグロビン値は12。男性としては少なめで、まさに貧血です。
会社の健康診断ではフェリチンは測っていませんのでデータはありませんでしたが、もし測ればかなり低い値であるのは間違いないと予想されました。
「きっと献血が不調の原因なので、献血をするのはやめてください!!!貧血でうつになるのですよ。」
と言うと、
目をぱちくりさせて、
「そこですか??献血が原因で落ち込んじゃうのですか?」
と怪訝そうな顔です。
心と身体の健康にとって、いかに鉄が大切かということを丁寧に説明して納得していただきました。
「栄養療法基本セット」をしっかりと服用して1カ月後。彼は見違えるように元気になりました。
そして、奥様も同じものを一緒に飲み始めたそうです。
「なんだか、ぼくよりも妻のほうがもっと元気になりました!」
とのことでした。
不妊症で治療を考えていると話していましたので、そちらのほうにも良い影響があるのではないかと考えています。不妊症は鉄不足が原因となることがあります。
実は私は栄養指導で不妊治療が成功した症例も経験しています。
献血で体調不良に陥っている人は意外に多いと考えています。
献血の健康影響
献血を1度すれば半年くらい回復に時間がかかると言われています。女性であればもっと長くかかるはずです。
赤十字センターの規定では、年間(52週)の総献血量を以下のように定めています。
200mL献血と400mL献血を合わせて
男性1,200mL以内
女性800mL以内
男性では400ml献血を年3回、女性では2回までということになります。
ですが、この回数はお勧めできません。
人間の血液量は体重の1/13と言われていますから、体重が50キロであれば3.85キロ、3.85リットルです。400mlの献血は血液量の1割を出してしまうということになるわけです。その影響は計り知れません。
学生さんに献血について話を聞くと、
「献血に行くといろいろもらえるし、夏など涼しい部屋で冷たい飲み物をのんでくつろげるから、ちょっと疲れたときとかに行くと良いんですよね〜」と。
これはとんでもないことですよね。
暑い夏、汗がたくさん出てただでさえ鉄分が汗から失われてしまう時期、鉄分を減らす献血をするなんて!
身体にとって、鉄分(だけではありませんが)を減らすことは大きい負担となります。
ジュースなどでつられてはいけません。
献血は人を助けるための素晴らしい行いなのですが、ご自分の健康のことを考えるのであれば、よほど自信がある方以外はあまりお勧め致しません。
どうしても、ということであれば元気な男性は年に2回(理想は1回)、元気な女性は年1回までにしてください。
そして日ごろから肉類をたくさん食べて、場合によっては鉄剤を服用することを強くお勧めします。
全血輸血と成分輸血
この記事は、400mlの全血献血を前提として書いております。献血の6割は400ml献血です。これは身体への負担が大きいのですが、患者さんの副作用の発現率が低いため、医療機関としてはとても有難い献血です。
成分献血は、成分採血装置を使用して血小板や血漿といった特定の成分だけを採血する方法です。回復に時間のかかる赤血球については一度採血した後に体内に戻します。ただし、採血にかかる時間が、全血献血で10~15分程度、成分献血は採血量に応じて40~90分程度となり、全血献血を選ぶ人が多いようです。
血液の値段
情報通の方から聞いた話によると、400mlの献血は何十万円もの価値を生み出すそうです。
それだけ血液は貴重だということです。
どうか、ご自分の身体を第一に考えて大切になさってください。