- 投稿日
- 2018年11月22日
- 更新日
水素について
水素の医学的効果
水素は、2007年に日本医科大学の太田成男教授の研究グループから非常に画期的な論文(1)が、「Nature Medicine」という権威のある医学雑誌に発表されました。
すべての病気の原因ともいわれている活性酸素を体内で効率よく選択的に取り除き、脳梗塞による脳の障害を著しく減らすことが突き止められたのです。これはマウスによる実験でしたが、水素分子が抗酸化物質として健康障害の予防・治療に有用であるという世界初の研究であり、人においても同じ効果が期待できると世界中から注目を集め、これをきっかけに多くの水素研究がスタートを切りました。
それから10年が経過した現段階において、数百もの科学論文が発表され、そのほとんどが水素の効果を肯定するものとなっています。ほぼ全身にわたる多くの疾患に対する効果が報告されています。また、すでにおよそ20の臨床実験が行われており、日本においては先進医療のB指定を受けていました(2)。
水素の先進医療指定について
私の著書人生100年の健康づくりに医師がすすめる最強の水素術 ではすでに先進医療Bが2022年に取り消された経緯について詳しく紹介していますので、詳しくはそちらをお読みください。
こちらのサイトの情報更新が遅れておりましたので、お詫び致します。
慶應義塾大学医学部水素ガス治療研究センターの研究では、救急外来に心停止で運び込まれる患者さんに水素吸入を行った場合、蘇生後の脳障害、心臓障害が大幅に抑えられることが確認されていました(3)。
そこで、慶應義塾大学医学部は、再灌流障害についての、ヒトでの臨床治験を行うために、厚生労働省に申請を行い、2016年に水素ガス吸入療法が先進医療Bに指定されました。
「水素ガスの吸入療法は安全であり、広く提供可能な画期的な治療となる可能性が高いこと、血流が一時停止した組織に再度血流が流れるときに活性酸素が大量に発生して組織に傷害を与える再灌流障害を水素が抑えること、そしてそれが患者の予後を大きく左右し、 心停止後の生存率や脳の機能の改善も期待できる」と、水素ガスの効果が期待されたということです。
水素吸入の臨床利用の安全性も確認され、2017年2月から臨床試験が全国の12医療機関で行われました。
ところが2019年12月から始まった新型コロナウイルス肺炎の流行によって、この治験では症例を集めることが難しくなってしまったのです。このため、臨床試験の予定症例360例に対し、登録症例73例の段階で「研究実施計画書に定められた中止基準である、「研究対象者の組み入れが困難で、予定症例数に達することが困難であると判断された場合」に該当すると判断され、治験が中止されました。
そして、慶應義塾大学医学部は、水素吸入の先進医療Bの承認について、2022年3月に取り下げ申請を行い、、6月に告示されたのです。
水素吸入についての先進医療の認定取り下げは、決して水素の有用性や安全性が否定されたからではありません。単に、治験が終了したために取り下げたということです。
水素に懐疑的な意見を持っている方が、事情を知らずに、「先進医療が取り消されている!水素はやはりあやしい」という意見を述べていることが多いのですが、それは全くの誤りであり、実は水素の効果は着々と確実しされつつあるのです。
治験では非常に良い結果が得られ、2022年11月5日にアメリカ心臓学会蘇生科学シンポジウムで発表されました。この結果をみると、水素が心停止後の再灌流障害を抑える効果を持つことは確実であると考えられます。さらに、2023年3月には「eClinicalMedicine」誌に論文が発表されました(4)。この論文についても、統計学的有意差が出ていないという批判をする方がいます。けれどもこれも、統計で有意差を出せるための症例を集めることができなかったことによります。明らかに水素吸入により、心停止、蘇生後の死亡率は下がり、後遺症なく回復する割合は上がっているのです。
慶應義塾は3月22日にプレスリリースを行っており(5)、3月27日にはNHKニュースで大きく取り上げられました。
今後、今回の治験(第2相臨床試験)結果を受けて、第3相臨床試験へと進んでいくことが期待されています。
水素の効果について
早期の疲労を防ぎ、持久力、疲労回復をサポートする
ミトコンドリアのATP生産をサポートすることによってエネルギーを増加させる
筋肉中の乳酸生成を減少させる
フリーラジカル生成を抑え、酸化ストレスを減少させる
微小傷害からの保護
抗炎症効果
血管拡張、循環促進効果
水素の効果が期待できる疾患
MEDLINEという論文検索ソフトで検索した結果、今までに研究で確認されている水素により予防、治療の可能性のある疾患は以下の通りです。ただし、動物実験の結果によるものも含みます。2015年にこれまでの水素研究を網羅する論文(6)が出ましたが、これをみると、ありとあらゆる臓器、疾患に効果がある可能性が高いことがわかります。
生活習慣病:糖尿病、高血圧、脂質異常症、動脈硬化、メタボリックシンドローム
循環器疾患:脳梗塞、脳出血、心筋梗塞
神経疾患:パーキンソン病、アルツハイマー病、認知症
肝臓:ウイルス性肝炎、肝硬変
アレルギー性疾患:花粉症、アトピー性皮膚炎、気管支喘息
自己免疫疾患(膠原病):関節リウマチ、SLEなど
筋疾患
悪性腫瘍:乳がん、大腸がん、肺がん、すい臓がん、前立腺がん
抗がん剤、放射線治療の副作用軽減
感染性・炎症性疾患:クローン病、歯周病
その他:白内障、筋肉疲労回復、日焼け、乾癬など
水素風呂の健康効果
水素風呂は体表面から一気に水素を体内に吸収することができます。
吸入とはまた違った意味での効果があります。
特に、皮膚疾患(アトピー性皮膚炎、乾癬、湿疹、じんましん、皮膚の感覚障害)などにはかなり効果があると感じています。多くの改善のご報告を頂いています。
私は水素風呂の生成器と入浴剤の両方を使っています。簡単なのは入浴剤です。
皮膚科の先生からご紹介いただいたものがこちらです。極楽温泉気分を楽しむことができますので、ぜひお試しくださいませ。
水素カプセルのお勧め
吸入が一番であると考えていますが、外出先、旅行中など、吸入ができないときに水素カプセルを飲んで体内で水素を発生させるというのは効果的です。
お勧めのカプセルはえごま油に水素を吸着しているものです。ご興味お持ちの方はお問合せ欄からお問合せください。
参考文献
(1) Ohsawa I, Ishikawa M, Takahashi K, et.al. Hydrogen acts as a therapeutic antioxidant by selectively reducing cytotoxic oxygen radicals. Nat Med. 2007; 13(6): 688-94.
(2) 厚生労働省 先進医療
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/sensiniryo/kikan03.html
(3) 佐野元昭 水素ガス吸入療法による心肺停止蘇生後臓器障害抑制 Organ Biology 23(2):117-120 2016
(4) Efficacy of inhaled hydrogen on neurological outcome following brain ischaemia during post-cardiac arrest care (HYBRID II): a multi-centre, randomised, double-blind, placebo-controlled trial
Tomoyoshi Tamura, Masaru Suzuki, Koichiro Homma, Motoaki Sano
HYBRID II Study Groupe
(5) 水素吸入療法が院外心停止患者の救命および予後の改善に効果-全国の救急医療機関で実施した臨床試験結果報告-
https://www.keio.ac.jp/ja/press-releases/2023/3/22/28-136611/
(6) Ichihara M, Sobue S, et al. Beneficial biological effects and the underlying mechanisms of molecular hydrogen- comprehensive review of 321 original articles. Med Gas Res. 2015; 5:12.