宮川路子の水素栄養療法

主治医が教えてくれない水素・栄養療法の話   うつ、がん、アンチエイジング

いじめ対策・解決法としての栄養療法

いじめは増加しています

現在、日本ではいじめの件数が大幅に増加しています。

2018年10月25日の産経新聞(1)によると、
文部科学省が実施した問題行動・不登校調査で、平成29年度に認知されたいじめが前年度から9万件以上増加し、41万4378件と過去最多を更新したことがわかりました。
特に小学校で前年度より3割以上増加。会員制交流サイト(SNS)などインターネット上のいじめも1万2632件で過去最多だったそうです。
心身に大きな被害を受ける「重大事態」も474件で78件増えました。いじめによる児童生徒の自殺は10人でした。

この増加は非常事態であると考えています。

ユニセフ(国連児童基金)が2018年9月に発表した報告書(2)によるとによると、世界の13歳から15歳の生徒の半数にあたる1億5000万人が学校において子ども同士の暴力を経験しているとのことです。内容をご紹介すると


世界の13歳から15歳の生徒の3人に1人以上がいじめられたことがあり、また3人に1人が腕力を伴うけんかをしたことがある(122カ国のデータ。日本はデータに含まれていない)
先進国39カ国の11歳から15歳の10人に3人が、他の生徒をいじめたことを認めている(日本はデータに含まれていない)
男子・女子ともにいじめに遭うリスクは同じだが、女子はより心理的ないじめに遭いやすく、男子はより身体的な暴力や脅威にさらされやすい

のだそうです。

いじめはもはや世界的な問題なのです。

いじめと栄養の関係について

栄養状態はこころの健康に大きい影響を与えます。
そして、いじめや暴力、犯罪は栄養と密接な関係があることは今までに多くの研究によって明らかとなってきています。
国民全体の栄養を改善すれば皆のこころが穏やかになり、犯罪やいじめも減って平和な世の中になるのではないかと思われます。

犯罪、いじめと栄養についての研究結果をいくつかご紹介します。

犯罪と摂食障害の関係  スウェーデンの研究

スウェーデンで行われた大規模なコホート研究(信頼性の高い疫学研究)(3)では、摂食障害とその後の犯罪歴についての関係を調査しました。1979〜1998年にスウェーデンで生まれた女性、95万7106名を15歳から最大20年間も追跡調査した研究です。

このような研究は個人番号によって病歴、犯罪歴などが一元管理されているスウェーデンだからこそ可能となった質の高い研究であると言えます。

窃盗などの犯罪は、摂食障害(拒食症)があった女性で2.5倍も高かったのです。拒食症ではタンパク質、ビタミン、ミネラルの不足が起きます。タンパク質不足は神経伝達物質の不足を引き起こし、精神不安定となります。
過食症においても、犯罪のリスクの上昇が認められました。過食ではエネルギー摂取が糖質に偏る傾向があります。糖質の過剰摂取はインスリンの大量分泌により血糖値の乱高下が起きるため、いらいらなどの精神不安定な状態を作り出します。

栄養状態の偏りは犯罪を犯すリスクが高いことが確実であるということがわかったのです。

ジャンクフードの摂取といじめ、暴力、精神的な健康 イランの研究


ジャンクフードの摂取が精神的な健康に影響を与えるという研究もあります。
イランにおける研究(4)では、6歳から18歳の生徒13486名を対象とした調査で、ジャンクフードの摂取頻度が心配、憂鬱、不眠、不安、攻撃性、無価値などの精神的苦痛と関係し、またジャンクフード(清涼飲料水、ファーストフード、塩味のスナック)の摂取が暴力的な行動(いじめの加害・被害、暴力)と関係していることが示されました。

ジャンクフードの摂取が子供の精神、そして暴力行動のリスクを高める可能性があるのです。

栄養不足と暴力・いじめ  米国の研究

米国でもいじめは大きい社会問題となっています。若者の3人から4人に1人がいじめを受けていると言われているほどなのです。

米国における学齢児童における健康行動の研究(5)では、10歳から17歳の若者8753名を対象として調査を行いました。不健康な栄養が持続的ないじめのリスクを著しく増加させることが示されたのです。たとえば、ジャンクフードを食べることが多い、栄養不足がある若者は人をいじめるリスクがとても高くなるのです。

同じ研究者による別の報告(6)では、米国とヨーロッパの41カ国の14万人以上の児童を対象として調査を行いました。
この研究では、いじめられる子どもについても栄養状態との関係が示されています。質の低い食事をしている子どもはいじめられる危険性が高くなりますし、また、いじめ加害者になる可能性も高くなります。

先進国において、いじめを防ぐためには食事を改善することが有効である可能性が示されているのです。

また、WHOの発展途上国における学生健康調査データを使用した研究(7)では、栄養、衛生習慣、運動などの健康的なライフスタイルが暴力、負傷の経験やいじめられるリスクと関係していることが示されました。

栄養失調と精神障害 バルバドスの研究

また、小児期に栄養失調であった人は成人期まで続く精神面の健康障害を引き起こす原因となることも報告されています(8)。栄養不足だった人は、成人してから統合失調症や人格障害などの精神疾患にかかるリスクが高くなるのです。

これらの研究結果を見ると、いじめを減らすためには栄養状態を改善し、運動をするなど、健康的なライフスタイルを確立することがとても大切であるということがわかります。

いじめられるリスクとしての栄養不良

そして、注目しなければいけないのは、栄養不良がいじめられるリスクにもなりうるということではないでしょうか。

決していじめられている人を非難しているのではありません。もしかすると、いじめられていることにより食欲不振に陥って栄養状態が悪化している可能性もあるのですから。

けれども、このような関係があることを知ると、いじめられている人が、しっかりと頑張って栄養を摂る必要性があるということがわかります。

栄養を摂れば確実にこころが元気に強くなりますから、もしかしたら良い方向に向かうきっかけとなるかもしれません。

栄養不良を放っておいてはいけません。
食欲が無いのであれば、是非サプリメントを摂ってください。
お子様であって、子供用のサプリメントがいろいろとありますし、大人のサプリメントを小さくして摂ってもよいでしょう。
しかも、ビタミンB群やビタミンCなどの水溶性ビタミンは大人の量をそのまま摂っても問題はありません。

いじめられている子どもの親の栄養

いじめられている子どもの親も、精神的に厳しい状況に陥ります。

悩んでしまって、食事をきちんと準備する元気が出ないかもしれません。そういう時にはためらわず、サプリメントを利用して下さい。

とりあえず必要な栄養が摂れると人間は力が湧くものなのです。

こころが元気になると、良いアイデアを考えつきます。

栄養は良い方向に向かう助けになると私は信じています。
糖質はできるだけ控えて、タンパク質、鉄、ビタミンB群、ビタミンCは必ず摂取してください。

どのようなサプリメントを摂ったらよいかについては、おすすめのサプリメントの記事をご覧ください。

栄養とこころの関係
栄養が精神に与える影響については、ほかの記事でもご紹介していますが、ここでも簡単に書いておきたいと思います。

タンパク質
タンパク質は神経伝達物質の原料です。ノルアドレナリン、ドーパミン、セロトニンなどの神経伝達物質は情動、気分に関わっています。タンパク質が足りないと、これらの神経伝達物質が足りなくなり、精神的に不安定になるのです。
こころを穏やかに保つためにはタンパク質が必要です。
また、免疫細胞もタンパク質でできていますから、免疫力も低下します。

ビタミンB1
ビタミンB1は活動のためのエネルギーを作り出すために重要なビタミンです。
ビタミンB1不足により、一番に起こるのはエネルギーの不足です。
疲れやすく、だるくなり、食欲がなくなったり、朝起きられなくなります。
また、糖質を摂りすぎるとビタミンB1が大量に消費されて、欠乏症を起こします。

ビタミンB6
アミノ酸の代謝、ビタミンB1同様神経伝達物質の合成、赤血球の合成などに関わっているため、不足すると、精神的に不安定になったり、貧血になったりします。また、トリプトファンからナイアシンを作るときに必要となりますので、ナイアシン不足を引き起こし、これもまた精神不安定な状況を作り出します。


エネルギーを作り出す働き、そして神経伝達物質の正常な働きを助ける役割も果たしています。鉄が不足するとエネルギー不足、うつ状態になってしまいます。そして、鉄の吸収を助けるためにビタミンCが必要です。

私のいじめ体験

私はいじめられた経験があります。いじめられている子どもの気持ちがよくわかります。あまり人には話をしたことがありませんが、ひとつの経験談として読んで頂きたいと思います。すべての方にあてはまるかどうかはわかりませんが、いじめから脱出する方法としてご参考になればと思います。

コラム 私がいじめられた体験

私は小学校5年生から6年生のときにいじめを体験しました。
いじめっ子は父親と兄弟が某所に入っているといわれていた家庭の女の子でした。髪を茶色く染め、子分を従えていました。

引っ越しをして転校生だった私のところに、近所に住んでいるその子は毎日朝迎えに来てくれていました。半年くらいはとても仲良く過ごしていたのです。

何がきっかけだったのかわかりませんが、急によそよそしくなり、クラスの子にも私と遊ばないように指示し始めたようです。ちょうど6年生になったころでした。
まわりの友達も、番長のようなその子の言うことには逆らえませんでした。後になって、何人もの友達が私に謝りにきたのです。

我が家は新築でしたから、もしかしたら嫉妬されてしまったのかもしれません。まずは、家の白壁に泥を投げつけられました。外で大声で怒鳴りながら土を投げつけているのを二階の窓からこっそりみて、私は恐怖を覚えました。

他にも、上履きを隠されたり、上履きの中に画鋲が入っていたりしました。朝学校に行くと、椅子に水がまかれていたこともありますし、体操着が汚く汚されたこともあります。そして、クラスではだれも私に話しかけようとしません。私はひとりぼっちで孤立していました。

まさに典型的ないじめです。

長い長い1学期が終わる終業式の日、
「ああ、ようやく明日から学校に行かなくても済む」
とほっとしました。

その夏休み、私はいじめのことを思い切って母に話しました。
すると母は、まず担任の先生のところに相談に行ってみなさい、と言いました。それで私は学校に電話をして、先生のところに1人で相談に行ったのです。

先生はとても優しい男の先生でしたが、もうすぐ定年となるくらいのお年で、ひょろっと細身で背が高く、頼りなさそうな感じの人でした。
しかもみんなからアル中気味だと噂されていて、赤い顔をしていることが多かったのです。今だったら確実に問題になっていたことと思います。

たずねて行った私がいじめについて話をすると、先生は
「すまない。」
と私に頭を下げました。

先生はとっくにいじめに気付いていらしたのです。
先生に謝ってもらう必要はなかったので、私は戸惑ってしまいました。

次に先生の口から出たのは私が思っても見なかった言葉でした。
「僕には、どうしてあげることもできない。本当にすまない。」

そして、また先生は頭を下げるのです。

私はどうしたらよいのかわからなくなりました。
太陽が照りつける8月の暑い日、学校から家まで歩いて2キロの道のりを、私はとぼとぼ途方に暮れながら歩いて帰ったことを今でもよく覚えています。
玉川上水沿いの歩道では、蝉の鳴き声が響いていました。

家に帰って母に報告すると、母は
「わかった。じゃあもう行かなくていいわよ。転校しようね。」
と言ったのです。

それから私と母は一緒に市の教育委員会に行きました。
いじめのことを訴えたのです。先生に言われた言葉も話しました。

担当の男性は親身になって話を聞いてはくれましたが、
「そういう理由で転校は出来ません、越境させるという前例がありません。」
という返事でした。

母はその対応にとても怒っていました。

そこから母は、いろいろと考え、すごい勢いで調べていたようです。
転校できるまで、学校は休んでいいからと言われた私はのんびりと9月を過ごしていました。

9月の半ばを過ぎたころ、母が
「これからお友達のところにご挨拶に行くわよ」
と言ったので、私は一緒に出かけました。
向かった先は隣の市の母の知り合いの家でした。

「いらっしゃい」
と迎えてくれたその家は、公立小学校のお向かいにある団地の一室だったと思います。
「本当に助かります。よろしくお願いします。」
と母が頭を下げました。

私はその家に住民票を移させてもらうことになったのです。住民票がその市にあれば、堂々と転校することができます。
子ども一人を他人の家に預ける理由として、役所に母は「離婚の話し合いをしているところなので」と説明したそうです。

当時はあまり良く理解していませんでしたが、後から思うと何と有難かったのだろうと思います。
母のお願いを受けてくださったその方には感謝してもしきれません。

そして、すぐに私はその小学校に通うことになりました。
小学校6年生の9月26日から転入したにも関わらず、あっという間にお友達もたくさんできて、それはそれは楽しい小学校生活を送りました。担任は30代半ばくらいの若い男の先生で一風変わった方でしたが、本当に面白く、クラス全体がとても良い雰囲気でした。先生が違うとこんなにも学校は違うのだと感じたものです。みんな勉強も遊びも思い切り頑張っていました。その先生とは未だに年賀状のやり取りをしています。一昨年定年退職なさったとのことでした。
そして、小学校卒業後はそのまま中学校も同じ市の公立中学に通いました。
そこでも3年間、幸せに恵まれすぎたともいえる充実した日々を過ごすことが出来たのです。

母にはとても感謝しています。
普通なら、担任の先生のところに母が行ってくれるのではないかと期待しますが、私に1人で行かせたのはきっと母なりの教育だったのでしょう。苦難に打ち勝つ訓練だったと思います。

そして母が考え出した転校するためのアイデアは、抜群でした。
もしかしたら少し悪い方法だったのかもしれませんが、私にとっては地獄から救い出された救いの一手でした。
もしあのまま同じ学校に通い続けなければいけなかったとしたら、おそらく頭がおかしくなって、それこそ自殺を考えるほど追い込まれていたに違いありません。

いじめられていても勇気を出して

私の例はほんの一つのケースです。

どん底の状態であっても、何も不可能ということは無いと私は信じています。

私はいじめについて相談されるときには、自分のこの体験談をお話ししています。
そのうち、何人かは本当に同じように住民票を移して転校させました。
環境をがらりと変えるとうまくいくことも多いのです。

辛い状況でじっと耐えることは子どもにとっては苦痛以外の何ものでもありません。
まわりの大人が積極的に動いて対応することが望まれます。

いじめられている場合には、積極的に周囲の大人にSOSを出しましょう。勇気を出してください。
そして、いじめに気づいた人、いじめを知った人は必ず行動してください。
「大丈夫?」
とひとこと声をかけてあげるだけでもいじめられている人にとっては大きな力、希望となります。

いじめられている子どもを救い出せるように、社会が協力していかなければいけないと強く感じています。

私のブログは今何位でしょう?

参考文献

(1) https://www.sankei.com/life/news/181025/lif1810250021-n1.html
(2) https://www.unicef.or.jp/news/2018/0148.html
(3)Yao SK. Risk of being convicted of theft and other crimes in anorexia nervosa and bulimia nervosa: A prospective cohort study in a Swedish female population. Int J Eat Disord. 2017 Sep;50(9):1095-1103. doi: 10.1002/eat.22743. Epub 2017 Aug 9.
(4) Zahedi HK.Association between junk food consumption and mental health in a national sample of Iranian children and adolescents: the CASPIAN-IV study. Nutrition. 2014 Nov-Dec;30(11-12):1391-7. doi: 10.1016/j.nut.2014.04.014. Epub 2014 May 9.
(5) Jackson DB et al. Poor nutrition and bullying behaviors: A comparison of deviant and non-deviant youth. Journal of Adolescence, 57: 69-73. 2017
(6) Jackson DB. Diet quality and bullying among a cross-national sample of youth. Prev Med. 2017 Dec;105:359-365. doi: 10.1016/j.ypmed.2017.06.033.
(7) Turagabeci AR et al. Healthy lifestyle behaviour decreasing risks of being bullied, violence and injury. PLoS One. 2008 Feb 20;3(2):e1585. doi: 10.1371/journal.pone.0001585.
(8) Hock RS et al. Childhood malnutrition and maltreatment are linked with personality disorder symptoms in adulthood: Results from a Barbados lifespan cohort. Psychiatry Res. 018 Nov;269:301-308. doi: 10.1016/j.psychres.2018.05.085. Epub 2018 Jun 18.