宮川路子の水素栄養療法

主治医が教えてくれない水素・栄養療法の話   うつ、がん、アンチエイジング

風邪の抗生剤、インフルエンザの検査と抗ウイルス薬は不要 栄養療法を取り入れましょう

抗生剤は風邪には効果がありません

抗生剤はとても有用な薬です。日本では死因の1位だった結核の死亡率が1940年代に抗生剤(ストレプトマイシン)の出現によって一気に下がりました。この発見により、セルマン・ワクスマンは1952年にノーベル賞を受賞しています。

抗生剤は有効に使えば命を救う素晴らしい薬ですが、不適切な使用では深刻な副作用を招きます。まさに諸刃の剣です。

風邪をひいたときに、医者にかかると抗生剤が処方されることが多いです。ですが、これは日本だけの現象だということをご存知でしょうか?

そして、処方された抗生剤をしばらくのむと今度は下痢になります。
すると患者さんは、
「ああ、とうとう風邪のバイキンがおなかにまで来ちゃった」
と感じます。
そしてまた病院に行って、胃腸薬を処方してもらうことすら多いのです。

何故治療をしているにもかかわらず、このようなことが起るのでしょうか?
それは、抗生剤のせいです。

実は、このような場合の下痢はほとんどが抗生剤をのんだことによって引き起こされたいわゆる「医原病」(後ほどご説明します)なのです。

感染症  細菌とウイルス

2種類の病原体(細菌とウイルス)が,ほとんどの感染症の原因です。

実際には,ウイルスがほとんどの咳や咽頭痛,そしてすべての感冒(かぜ)の原因です。細菌感染症は抗生剤で治療することが出来ますが,ウイルス感染症は抗生剤では治せません。ウイルス感染症のときには,あなたのお子さんは病気の経過をたどって自然に治っていきます。

ウイルス感染症は、発熱など、自分の免疫力で自然治癒するものなのです。

高い熱は熱に弱いウイルスを殺すために必要な生体反応です。それをわざわざ解熱剤で下げるというのは頂けません。さらに効かない抗生剤をのんで、大切な腸内細菌が死んでしまい免疫力が低下し、さらに下痢となるのです。

腸内細菌は免疫機能と密接な関係があります。ヨーグルトや発酵食品をたくさん食べてせっかく善玉菌をたくさん増やしていても、抗生剤をのむと一発で死んでしまいます。抗生剤はやたらにのむ物ではありません。

抗生剤使用量は日本が世界一

日本では抗生剤が濫用されています。使用量は世界一です。
風邪だけでなく、ちょっとした切り傷、手術後なども必要以上に処方されます。その結果起きているのが耐性菌の出現です。抗生剤は使えば使うほど耐性菌(抗生剤が効かなくなる菌)が増えるのです。耐性菌と、新しい抗生剤の開発はいたちごっこです。大したことの無い風邪などですぐに抗生剤をのんでいると、いざというときに効く薬がなくなってしまいます。

また、小さいときに抗生剤を内服するとアレルギーのリスクが1.7倍になるという研究(1)もあります。国立成育医療研究センターの研究チームによると、抗生剤を2歳までに服用したことがある乳幼児は、ぜんそく、アトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患を発症するリスクが、服用経験のない乳幼児と比べて1.4~1.72倍になるということです。特に、抗生剤の中でも幅広く多種類の細菌に対して効果を発揮する第3世代のセファロスポリンを使用すると、効果の幅の狭いペニシリンと比べて喘息で1.63倍、鼻炎では3.14倍もアレルギー疾患を発症しやすい結果が得られたそうです。

疾患によっては治療に抗生剤が必要な場合もありますが、効果の期待できないウイルス性の風邪などに対して不適切に処方すると子どもの健康を損なう恐れがあるのです。
これは、腸内細菌が免疫に関係していることが原因となっています。抗生剤は大切な腸内細菌を殺してしまうのです。
(腸内細菌と免疫については、「プロバイオティクスの健康効果 〜花粉症・アトピー性皮膚炎に効くサプリメント〜」の記事をご覧ください。)

日本では意味も無く抗生剤を処方する医師が多いのが現状です。さらには、もっと悪いことに、間違った知識を持っているために、“抗生剤を要求する患者さん”も多いのです。

私は以前大学の講義で、風邪のときの受診行動についてアンケート調査を行ったことがあります。かなりの割合で、
「風邪で受診したときに抗生剤を貰わないと治りが悪い」
「貰わないと心配だ」
という回答がありました。

さらには、
「抗生剤を処方しない医師はヤブ医者だ」
などという意見まであり、びっくり仰天してしまったのをよく覚えています。
それ以来、講義では毎年抗生剤をテーマにして話をしています。

日本における抗生剤の消費についてですが、日本で処方されることの多いセファロスポリン系の抗生剤、主にフロモックス、メイアアクトはほぼ日本のみで使用されています。

日本では出来高払いという医療制度のために、医師が処方した薬はよほどでなければそのままお金が保険組合から支払われますから、値段の高い新しい抗生剤をどんどん医者が処方する傾向にあります。そして、不必要な医療が過剰に行われているのです。

スウェーデンに来てびっくりしたのは、医者にかかることが少ないことだけでなく、薬の処方もとても少ないことです。風邪をひいてもよほどのことがなければ医者にはかからず、薬局に行って薬剤師さんに相談して解熱剤などを買い、家で静養します。
手術後の抗生剤の投与ですらほとんど行われません。

コラム 日本とスウェーデンの医療の違いについて

余談になりますが、さらにご紹介しておきましょう。

日本では、効果がないとわかっている抗がん剤治療を

「最期まで闘います」
「あきらめないで、少しでも可能性があれば治療してください」

と言って受けることがあります。その結果、辛い副作用に苦しみながら最期の数か月をただ”無駄な治療のために生きる”ことになるケースも多いのです。医療に対する考え方の変化で徐々にこのようなケースは減っていると思うのですが、それでもスウェーデンとは全く状況が違います。

スウェーデンでは、どんなに若い患者さんであっても、もう手の施しようがない、あと数か月の命だ、となった場合には、緩和ケア(患者さんの痛みを取り、苦痛を取り除く治療)以外のすべての治療を潔く打ち切るそうです。明らかに無駄とわかっている医療は行わないということです。

日本では医療費が膨大となり、財政を圧迫して国の借金がどんどん増えています。対するスウェーデンはなんと無借金の健全経営です。必要のない部分をばっさりと切り捨て、国民も医療へのアクセスを制限されているからこそ実現できることなのではないかと感じます。
しかも、寿命は大して違いがないのです。

日本とスウェーデンの比較についてはまた別の機会にご紹介したいと考えています。

日本で処方されることが多い強い抗生剤

さらに、日本のみで使用されているフロモックス、メイアクトは腸からの吸収が悪いため、吸収率をあげるようにピボキシル基がつけられています。これが、低カルニチン血症を引き起こし、特に小さい子供では低血糖、けいれん、脳症を起こす危険性が高く、警告まで出されているのです。このような危険性があって、しかも値段が高い薬をなぜ処方するのでしょうか。

同じセファロスポリン系であれば、昔から使われているケフレックスの方がよほど良い薬と言われています。けれども、医師は値段が高い新しい薬を使う傾向があり、ケフレックスを処方する医師はほとんどいません。

風邪で受診したとき、抗生剤をもらうのは間違っています。よほど重症で、細菌感染による肺炎が疑われるような場合をのぞき、抗生剤は必要ありません。さらに、処方された抗生剤がフロモックスやメイアクトである時にはそれを本当にのむかどうかよく考えて下さい。できれば、受診するときに、これらの抗生剤は処方しないで下さいとお願いした方が良いくらいだと思います。

さらに日本ではオラペネム、オゼックスという最強の抗生剤が子どもに使われています。子どもにこの薬を出すのは日本だけです。医学的に重症肺炎でもう他には使う薬がない、というような非常時のための薬を風邪の子どもに処方する医師がいるということに驚きを覚えます。

風邪には抗生剤は必要などころか、毒になりかねないのです。

強いものだとすれば、ちょっと、と考えて下さい。医者からもらった薬をそのままのんでかえって身体を悪くしては元も子もありません。

薬は医原病を作り出す

医原病という言葉をご存知でしょうか?

医療によって引き起こされる病気のことです。抗生剤の濫用は医原病を引き起こしています。
できるだけ薬を出さない医師こそが信頼できる医師であることが多いのです。たくさんの薬を処方したり、患者の求めに応じて何でもすぐに薬を出してくれる医師は信用できません。
ただし、私が取り組んでいるテーマの一つである「精神科医療における多剤併用・依存症の問題」でも同様ですが、薬を”オーダー”する患者さんが増えているのも原因であると感じています。けれども、医師の処方が先にありきだと思いますので、やはり改めるべきは医師の診療方針のほうかもしれません。

自分の健康を守るために、よく自分自身の頭でよく考えて行動してください。

米国では小児科学会が子供に抗生剤を安易に使わないようにと呼びかけています。

Your Child and Antibiotics:Unnecessary Antibiotics CAN Be Harmful
あなたの子供と抗生剤:不必要な抗生剤は有害です!

お子さんにとって有害にもなります。抗生剤は風邪(ウイルス感染症)に使用されるべきではありません。

耐性菌

多くの細菌に抗生剤が効きにくくなっています(耐性菌とよびます)。この耐性菌は通常の抗生剤で殺すことができません。耐性菌に感染すると,入院して静脈注射が必要となったり,ときにはどんな治療でも治せなくなったりすることがあります。抗生剤が使用されればされるほど,あなたのお子さんが耐性菌に感染する機会が増えることになります。

どうやって細菌は耐性化するのでしょうか?
抗生剤が使われると,抗生剤に効く菌(感受性菌)だけが殺されます。しかし,抗生剤が効かない耐性菌は生き残って増殖を続けます。抗生剤を繰り返し使用したり,不適切な使用を続けたりすると,耐性菌が増えることになります。これらの耐性菌は,家族や地域の人達にも拡がっていきます。

薬剤耐性(AMR)は世界的な課題となっており、ようやく日本も重い腰をあげて厚生労働省が取り組みを始めました。2016年4月に薬剤耐性対策アクションプランが策定され、2020年までに抗生剤の使用量を33%削減するという目標を立てました。このためか、2017年度の使用量は若干減少していますが、まだまだ対策は不十分です。
厚労省はさらに、2017年に「抗微生物薬適正使用の手引き」を出し、これに基づいて、軽症の風邪や下痢に抗生剤を処方しない病院に対して報酬を出すことを検討しています。

医師の教育も望まれるところですが、まずは自分で抗生剤をのまないという意識を持つことが大切でしょう。

インフルエンザについて

冬場に発熱すると、インフルエンザの検査を受けることが多いでしょう。そして陽性であれば、すぐに抗ウイルス薬(タミフル、イナビルなど)が処方されます。確かに「発症から48時間以内に服用すれば発熱の期間が1日短くなる」と言われています。ただし、服用しなくても自宅で静かに療養していれば必ずよくなります。昔は皆寝て治していました。繰り返しですが、発熱はウイルスを殺すために必要な反応です。

日本は世界最大の抗インフルエンザ薬消費国です。
国立感染症研究所が行ったサーベランスでは、抗インフルエンザ薬「ソルフーザ」の耐性株の検出率がA(H3N2)で17.9%であったと2019年3月4日に発表されました。
多くの人が新しい薬を処方されて飲んだことによって、その薬が効かないウイルスがあっという間に生み出されてしまったのです。

スウェーデンでは、インフルエンザに罹っても(実際は罹ったのかどうかは、判定薬で検査をしないのでわかりませんが)、インフルエンザの検査はしませんし、抗ウイルス薬などが処方されることはほとんどありません。
みな、家でゆっくりと休養と栄養をとり、薬局で買える解熱剤を購入して飲むだけです。それでほとんどの場合良くなります。20年くらい前までの日本と同じ状況です。

私の職場の研究者(2人の息子さんのママ)が最近2週間くらいお休みしていました。復帰してきたときに、「どうしたの?」と聞くと、
「子どもが順番にインフルエンザに罹ったの。そしてその後最後に私も罹ってしまったの」
とのことでした。
もちろん、検査は受けていませんし、抗ウイルス薬ものんでいません。高い熱が続いたから、インフルエンザだった、ということなのです。お子さんも彼女もすっかり元気になっていることは言うまでもありません。

日本は検査キットの出現によって、必ず検査をして診断書を提出するという、無駄な習慣が生み出されてしまいました。
発熱してすぐには検査をしても陰性のことが多いのですが、薬をもらうためには早く受診しなければいけませんから、39℃の熱が出ると皆受診します。そして、検査は陰性だけれども臨床症状からインフルエンザでしょうね、ということで抗ウイルス薬を貰って帰ります。

そして学校や会社を休むためには診断書が必要なので、次の日以降にまた受診して、検査を受けます。陽性であれば診断書を書いてもらいます。この診断書は自費扱いですから、お金がかかります。クリニックによって値段に違いがあるものの、おそらく2000円から5000円くらいの値段がかかるのではないでしょうか。

抗インフルエンザ薬をのんだとしても、熱が下がるのが少し早くなるだけですし、出席禁止は学校保健安全法で次のように定められています。

学校保健安全法 施行規則第19条
出席停止の期間の基準は、感染症の種類に従い次の通りとする。
インフルエンザ(鳥インフルエンザ(H5N1)及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)にあっては、発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(幼児にあっては3日)を経過するまで。

早く解熱したとしても、どうせ学校には行けないのです。早く熱を下げてしまうデメリット(ウイルスを殺す力を失う)を考えると、薬などのまず、医療費にお金を使わずに、熱が自然に下がったら美味しいものをたくさん買って食べる方がよほど良いでしょう。

インフルエンザにかかる医療費

医療費についてご紹介しておきましょう。
インフルエンザの検査(インフルエンザウイルス抗原精密測定)が1500円、判断料1440円です。
検査は原則1回のみ認められていますが、発症早期では陽性化しないため、2回まで認められています。
そして、検査料とは別に検体採取料の「鼻腔・咽頭拭い液採取」が50円となります。
費用は合わせて2990円。これに初診料、処方料、血液検査料などが加わり、1万円〜15000円程度の医療費となります。プラス診断書です。

診断書以外の保険適応の部分が3割負担であるとそんなに高いとは感じないかもしれませんが、実際にはとんでもなくお金がかかっているのです。
もし薬局で解熱剤を買うだけであれば千円程度、高くとも数千円で収まりますし、混んでいる外来で長時間待たされることもありません。

“抗インフルエンザ薬によって起ると言われている“異常行動について

抗ウイルス薬のタミフルによって高所から飛び降りるなどの異常行動が引き起こされるとマスコミで騒がれていますが、それは明らかに間違いです。

日本では現在、医療関係の訴訟が非常に多くなり、何かあればすぐに訴えるという風潮がありますが、誤った情報に踊らされて結局は訴訟に負けてしまい、高い弁護士費用を払うことになる患者さんが被害にあっているような状況です。

インフルエンザで高い熱が出たときに異常行動が起きることは以前から知られていました。

小児科の大ベテランの先生方が次のようにおっしゃっていました。

「昔は熱で寝ている子供が座敷から飛び起きて縁側から庭に飛び降りることがよくあったものですよ。縁側から落ちたくらいでは大したことはありませんが、現在は高いマンションに住んでいる人が多いですからね。そういうところから飛び降りると亡くなってしまいますよね。」

異常行動は薬のせいではなく、高熱のせいで起きるのだそうです。

ご自分の身を守るために、よく情報を集めて正しい行動をとるようにしてください。

風邪、インフルエンザの時にこそ栄養療法を

風邪やインフルエンザに罹ったときには栄養療法がとても効果的です。

1)ビタミンC
まずはビタミンCです。炎症を抑えて熱を下げます。
そのために、ビタミンCフラッシュ(大量摂取)を行います。ビタミンCフラッシュのやり方には様々なものがあり、一つに限られているわけではありません。必要量には個人差がかなりありますので、下痢(緩い便)にならないかどうかなど様子を見ながら調節してください。

30分おきにビタミンCを適量(人によって異なりますが、5g~10g程度)摂取します。高熱が出ていたとしても、たいていは、数時間後にかなり楽になります。10時間続けると、相当症状が改善されます。
量を調節するためには、粉末のビタミンC(アスコルビン酸原末)を用いると便利です。ただし、酸によって胃が荒れてしまう場合もありますので、錠剤やカプセル状のもの、あるいはリポカプセル化されたビタミンCなどを用いるのもお勧めです。

2)ビタミンD
ビタミンDの大量摂取も同時に行うとよりよいでしょう。
カナダのある病院で行われている治療法で、彼らが、”ビタミンDのハンマー”と呼んでいるものです。
これはビタミンDの記事でもご紹介しています。

インフルエンザの患者さんに、ビタミンDを
「50000IUの1回投与」、または「10000IUを1日3回2、3日投与」
を行います。

摂取後48〜72時間で症状は完全に抑えられるとされています。

子どもの場合には、体重にもよりますが、上述の量を体重50Kgの大人の摂取量として、体重あたりに直していただくとよいでしょう。
体重1キロあたり、1000IU,または200IUを1日3回3日間投与ですので、20キロの子どもであれば、20000IUの1回投与か、4000IUを1日3回3日間投与になります。

もちろん、タンパク質、ビタミンB群、ミネラルなども摂って頂くことが大切です。

風邪の抗生剤、インフルエンザの検査、抗インフルエンザ薬は必要ありません。

参考文献
(1) Yamamoto-Hanada K et al. Influence of antibiotic use in early childhood on asthma and allergic diseases at age 5. Ann Allergy Asthma Immunol. 2017 Jul;119(1):54-58.