宮川路子の水素栄養療法

主治医が教えてくれない水素・栄養療法の話   うつ、がん、アンチエイジング

糖質制限で健康になる 脂質・タンパク質摂取を

糖質制限は健康の基本

糖質制限が身体に良いということは、今や疑う余地がないところに来ていると思います。

2017年に、摂取する糖質の量が多いと死亡率が上がり、乳製品の摂取が多いほど、心血管疾患死亡率が下がるという衝撃的な論文(1)が“Lancet”という著名な雑誌に発表されました。

炭水化物の摂取量が多いと総死亡率のリスクが高くなり、総脂肪と飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸(単価、多価)のそれぞれの摂取量は総死亡率の低下と関係していました。また、飽和脂肪酸の摂取量は脳卒中と逆の相関、つまり飽和脂肪酸の摂取量が上がると脳卒中のリスクが下がる)を示しました。総脂肪と個々の脂肪の摂取量は心血管疾患のリスクや死亡とは関係していませんでした。

簡単に言うと

①炭水化物は死亡リスクを上げ、脂肪は死亡リスクを下げる。
②脂肪の中でも、飽和脂肪酸は脳卒中のリスクを下げる。
③総脂肪摂取量は心血管疾患のリスク、死亡とは関係ない。

ということです。

炭水化物は総エネルギー摂取量の60%以下に

さらに面白い結果としては、炭水化物を多価不飽和酸で等熱量(エネルギーの5%)置換すると、死亡リスクが11%低下し、炭水化物を飽和脂肪酸で置き換えると、脳卒中のリスクが20%低くなったそうです。
すべての脂肪について、疾患リスクの低下と関係がみられたわけではありませんが、エネルギーは炭水化物よりも脂肪で摂取した方が健康に良いという傾向は読み取れると思います。

総エネルギー摂取量における炭水化物の割合が60%を超えると死亡率が上がるという結果も出ています。いかに炭水化物を減らすことが死亡率を下げるために必要かということがわかると思います。

この研究は、カナダのマックマスター大学のDehghan博士らによる調査研究(Prospective Urban Rural Epidemiology:PURE)で、心血管疾患、全死亡に対する栄養の影響について調査した検証大規模な研究です。
5大陸18カ国で13万5335例(35歳〜70歳)の多様な人種、幅広い年齢の人を対象に、前向きコホート研究(追跡調査期間の中央値7.4年間)の結果です。
従来の研究の多くが欧米に限定されていたのに対し、東南アジア、中東、アフリカ大陸も含む多国籍の、あらゆる所得階層の対象者を含んでおり、研究手法、規模の大きさとともに非常に信頼性の高い研究といえるでしょう。ちなみに、教育、世帯収入、世帯資産、国の所得水準、農村部・都市部などの因子を調整しても結果は変わらなかったとのことです。

乳製品の摂取は死亡率を下げる

上記の研究は2017年に発表されたものですが、さらに2018年に乳製品の摂取についての新たな論文(2)が発表されました。

乳製品(牛乳、ヨーグルト、チーズ)の摂取量が多いほど総死亡率、非心血管死亡率、心血管死亡率、主要心血管疾患および脳卒中のリスクが低下していました。牛乳とヨーグルトの摂取量が多いは総合的な複合リスクを下げますが、チーズ摂取は統計的に有意な関連を認めていません。

乳製品の摂取はにより死亡リスクが低下し、主要な心血管疾患のリスクが下がることが報告されました。

PURE研究の前、2016年に発表された研究でも同様の結果が報告されています。

「食物消費と心血管疾患の実際の統計42のヨーロッパ諸国の疫学的比較」という論文(3)です。
ヨーロッパの42カ国で行われた心血管疾患と食物についての調査が行われました。脂肪がもはや心血管疾患のリスクとは関係ないことが明確に示されています。

この研究で示された衝撃的な事実は、
心血管疾患のリスク低下と最も強く関係している食事は総脂肪と動物性タンパク質の高摂取
だったのです。

また、柑橘類、高脂肪乳製品(チーズ)、木の実もリスクを下げることが示されました。

逆に、心血管疾患のリスクを上げるのは炭水化物とアルコール、じゃがいも、シリアルの摂取でした。
さらに、炭水化物を多く摂ると血圧が上がることも示されています。

脂肪を多くとると動脈硬化が進み、血圧があがって、心筋梗塞を引き起こす、ということがずっと信じられていましたが、とんでもないことだったのです。

脂肪を控えるという栄養指導は誤り

今までに言われていた脂肪を多くとると動脈硬化になって、心血管疾患のリスクが上がるというのは間違いということです。

食事でとる脂肪が血中コレステロール値に影響を与えないということはすでによく知られており、

「卵を食べてはいけない」
「肉の脂身は体に悪い」
「飽和脂肪酸を摂るとLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が上がる」

というような栄養指導は時代遅れのものとなっています。

2015年にアメリカでは、栄養指針が改訂され日本でも、「日本人の食事摂取基準」2015年版(4)で、コレステロールの摂取基準が除かれています。

脂質ではなく、炭水化物の摂取が中性脂肪とsd-LDLコレステロール(特に動脈硬化を促進する悪玉コレステロール)を上げ、HDLコレステロール(善玉コレステロール)を下げ(5,6)総エネルギー摂取量における炭水化物の割合をできるだけ下げ、脂質で置き換えるるような適切な糖質制限の食事を心がける必要があります。

栄養指導は完全に変わらなければいけません。糖質制限と肉類などタンパク質の摂取、そして脂肪の摂取です。
昨日までの常識は今日の非常識という言葉がまさにぴったりといったところでしょうか。

現在でも、この誤った食事指導をしている医師、栄養士が多くいることに危惧を覚えます。

糖質制限で若々しい70歳女性

最近、ネットで話題になったオーストラリアの70歳の女性がいます(7)。

この女性は、28年間の完全砂糖を断つ生活生活を送っています。若々しいビキニの写真がネットで拡散して、注目を集めました。TV番組でのインタビュー映像(8)を見ましたが、30代くらいに見えるほどです。

もともと甘いものが大好きだったそうですが、糖尿病を患ったことをきっかけに糖質を断ったそうです。ただし、ストレスがたまらないように、キシリトール入りのクッキーなどを考案して、レシピ本を出版し、お菓子の販売も行っているのです。加えてヨガ、瞑想、睡眠時間を8時間キープすることなども実践しています。

彼女の映像を見ると、誰でも70歳のときに、このようにありたいと願うことでしょう。そのためには、糖質制限をしなければいけません。

正しい糖質制限について

糖質制限をすると、カロリー不足になり、ふらついたり、元気がなくなったりするという訴えを聞きます。これは、間違った糖質制限をしているためです。
糖質制限はカロリー制限ではありません。カロリーはタンパク質と脂質でしっかりと摂ってください。

脂質は健康に良くないと考えている人が多く、乳製品も避ける傾向にありますが、前述したように、脂肪、乳製品は死亡率を下げる、優良なカロリー源です。糖質を摂らなければ、脂肪がエネルギーを効率よく産生するため、肥満になることもありません。

糖質を摂らないことの健康影響の仕組みについて、糖尿病の治療が参考になりますので、次にご紹介したいと思います。

参考文献

(1) Dehghan M et al. Associations of fats and carbohydrate intake with cardiovascular disease and mortality in 18 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study. Lancet. 390(10107):2050-2062.2017
(2) Dehghan M et al. Association of dairy intake with cardiovascular disease and mortality in 21 countries from five continents (PURE): a prospective cohort study.
Lancet. 24;392(10161):2288-2297.2018
(3) Grasgruber P et al. Food consumption and the actual statistics of cardiovascular diseases: an epidemiological comparison of 42 European countries.Food Nutr Res. 2016 Sep 27;60:31694. doi: 10.3402/fnr.v60.31694. eCollection 2016.
(4)https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf#search=’%E3%80%8C%E6%97%A5%E6%9C%AC%E4%BA%BA%E3%81%AE%E9%A3%9F%E4%BA%8B%E6%91%82%E5%8F%96%E5%9F%BA%E6%BA%96%E3%80%8D2015%E5%B9%B4%E7%89%88′
(5) Hoogeveen RC et al. Small dense low-density lipoprotein-cholesterol concentrations predict risk for coronary heart disease: the Atherosclerosis Risk In Communities (ARIC) study. Arterioscler Thromb Vasc Biol 2014; 34: 1069–77.
(6) Parish S et al. Lipids and lipoproteins and risk of different vascular events in the MRC/BHF Heart Protection Study. Circulation 2012; 125: 2469–78.
(7)http://www.odditycentral.com/news/70-year-old-woman-credits-youthful-looks-on-sugar-free-diet-internet-doesnt-buy-it.html
(8) https://youtu.be/NQXX3YyflCo