分子整合栄養医学とは
分子整合栄養医学はノーベル賞を2回受賞したLinus Polingによってはじめられました。1968年にサイエンスという学術雑誌に彼が投稿した論文、「Orthomolecular psychiatry. Varying the concentrations of substances normally present in the human body may control mental disease.」(オーソモレキュラー精神医学 人体に通常存在している物質の濃度を適切にすることによって精神疾患をコントロールできる可能性)において分子整合栄養医学という彼の造語が発表されました。
栄養素による治療
分子整合栄養医学とは、細胞に栄養を十分に行き渡らせることでその機能を強化し、免疫力を高めて健康な身体を作り上げていく医学です。身体は37兆個の細胞でできており、その個々の細胞は栄養素で構成されているという考えから、全身の細胞における分子(物質)の濃度を適切に調整することによって、身体の持つ治癒力を高め、病気を治していきます。投薬治療を主とした西洋医学とは一線を画し、個別の疾患や臓器に対応するのではなく、栄養素による介入で全身に働きかけます。その意味で、分子整合栄養医学による治療は基本的なところはすべての方に共通しているシンプルなものなのです。
細胞が生命活動のために必要なエネルギーをつくり出す過程で必要な栄養素はすべての細胞において共通しています。これらの物質を不足なく補っていくことで、免疫力、自然治癒力を高めて健康な身体を作り上げていくのです。
ですから、分子整合栄養療法ではほとんどの場合薬を使いません。細胞にもともと存在している物質は栄養素であり、本来は食事から摂取できるものになります。ただし、現在では様々な理由から食材中の栄養素の含有量が減少しており、通常の食事では十分な量が摂取できないことが増えてきています。また、食事にあまり注意を払えない方もいらっしゃいます。この場合にはサプリメントに頼ることになるわけですが、これらはほとんどが医師の処方無しに購入できるサプリメントで対応できるのです。
治療を始めるときに薬をのんでいるケースでは、身体の回復とともに少しずつ服薬量を減らしていけることが多くあります。また、ビタミンやミネラルは処方薬との飲み合わせも問題ないことがほとんどですから、今受けている治療と併用して頂くことが可能です。
分子整合栄養療法では、処方薬を使用せず、生活習慣を見直し、食事を改善したうえで、足りない栄養素についてはサプリメントで補充していくことになります。サプリメントでも不足する場合や緊急を要する場合には点滴療法を併用することもあります。
胃腸の調子を整える
食事バランスを考えて三食を規則正しく、楽しみながらゆっくりよく噛んで食べることが大切です。そして、食事だけでは足りない栄養素についてはサプリメントで補充していきますが、それでも調子がよくならない人がいます。こういった方は吸収に問題があることが多いのです。
近年リーキーガット症候群という新たな病態が知られるようになってきました。この病気は腸の粘膜が破壊され、栄養素の吸収が適切にできなくなってしまうものです。原因としては、各種化学物質、有害物質、遺伝子組み換え食品などがあげられていますがはっきりとしたことはわかっていません。リーキーガット症候群では栄養素を経口でとったとしても体内に取り込むことができません。そのために心身の多様な症状が出現します。摂取したものがしっかり消化、吸収できているかどうかを確認することも大切です。
リーキーガット症候群の治療も栄養素で対応します。分子整合栄養療法のクリニックでは、腸内環境の確認として便の検査を行ったり遅延型アレルギー検査をお勧めしているところも多いのですが、お値段が高いのが欠点です。検査で病態を確認した場合でも用いるサプリメントが大幅に変わることはありませんので、症状からリーキーガット症候群が疑われる方はご自身でサプリメントを購入して飲んで頂いても、問題ありません。リーキーガット症候群についてくわしくはこちらをご覧ください。
個人差を考慮
人には個人差があります。身体の大きさや運動量、食事量、免疫力など様々に異なっています。細胞の強化のために必要な栄養素の種類は同じでも、それらのうち、どれをどの程度摂取すればよいのかは人によって違うのです。訴えている症状、病気、生活習慣などに加え、血液検査を行うことによって必要な栄養素とその量を判定します。
ただし、栄養素を補充することにおいては、よほどのことがない限り、”摂り過ぎ”となる心配はありません。分子整合栄養療法を専門としている医師を受診することが難しければ、ご自分でお勉強していただき、基本的なサプリメントを購入してのんで頂いても大丈夫です。ただし、中には注意を必要とする栄養素もありますので、このサイトの情報をよくお読みください。